2020年03月03日掲載
「5人制サッカー」とは、通称「ブラインドサッカー(注1)」とも言われています。
ブラインド(英語の「盲目」の意味)が表すとおり、見えない状態で行うサッカーのことで、視覚障がい者と晴眼者が一緒にプレーを楽しむことができます。
ボールは、転がると「カシャカシャ」音がする特殊な構造をしていてこの音と仲間の声を頼りに、プレイヤーはボールを追いかけます。
「5人制サッカー」のルールは、フットサルのルールが基になっています。しかし、視覚障がい者がプレーするため、アイマスクをしたり、ピッチの両サイドライン上にフェンスを立てるなど独自のルールがあります。
今回は、視覚障がい者スポーツの「5人制サッカー」をご紹介します。
(注1)「ブラインドサッカー」は、NPO法人日本ブラインドサッカー協会の登録商標です。
競技の特徴・ルール
1チームにつきフィールドプレーヤー4人と目の見える晴眼者か弱視者がゴールキーパーを務め、計5人で競技します。またこの5人に加えて、相手ゴール裏に陣取って指示を出すガイド(コーラー)(注2)やサイドフェンス裏の中央付近にいて指示を出す監督を含め、7人で構成されます。
(注2)ガイド=目の見える「ガイド」は敵陣ゴールの裏にいて攻めている場面でゴールの位置と距離、角度、シュートのタイミングなどを声で伝えます。
試合時間
前半、後半とも20分のプレイングタイム(プレーが続いている間のみの試合時間)で行われます。
国内大会では、それぞれの大会要項に従い、競技時間を変更する場合があります。
フィールドやゴール・ゴールエリアサイズ
フィールドはフットサルと同程度のサイズの40m×20m。ゴールキーパーは、縦2m×横5.82mのゴールエリアの中でプレーをします。ゴールの大きさは、 縦2.14m×横3.66mです。
アイマスクの着用
視力差による不公平が生じないように4人のフィールドプレーヤー全員がアイマスクを着用しなければなりません。
国際ルールにおけるブラインドサッカーの競技者(B1クラス)の見え方には、全くの暗闇の人から光を感じられる人まで違いがあります。それらを公平にするため、目の上にアイパッチをはり、アイマスクを着用することが義務付けられています。
国際大会は開幕前に専門医による視力検査があり、B1クラス(全盲から光覚まで)と判断された人しか出場できません。しかし、国内ルールでは競技の普及のため、同じ様にアイマスクを着用することで、目の見える人も弱視の人も、全盲のプレーヤーと共にプレーできるルールとなっています。
サイドフェンス
フィールドは、両サイドライン上に高さ1mほどのフェンスが設置されます。このフェンスは、ボールがサイドラインを割らないことや、プレーヤーがフィールドの大きさや向きを把握することを助けます。サイドフェンスの跳ね返りを使ったパスも頻繁に見られます。(万一フェンスの上からボールがピッチ外に出た場合、出たその場からキックインで再開)
PKと第2PK
ペナルティーエリア内での反則には、相手チームにPKが与えられます。ゴールから6mの位置から蹴ります。もう一つ、第2PKというものがあります。これは、前後半それぞれ、チームで累積されるファウルが6つを超えた場合に、相手チームに与えられます。ゴールから8mの位置から蹴ります。また、GKは5.82m×2mのエリア内しか動くことができません。エリア外にあるボールに触ることも反則です。
Voy(ボイ)!
ボールを取りにいくフィールドプレーヤーは、「ボイ!(スペイン語で「行くぞ!」の意味)」という掛け声を出さなくてはなりません。選手の存在を知らせ、危険な衝突を避けるためのルールです。「ボイ!」を言わずにボールを取りにいくと、ノーボイというファウルになります。
観戦の見どころ
通常、人は情報の8割以上を視覚から得ていると言われています。しかし、「5人制サッカー」は、その情報を遮断しプレーしなければなりません。フィールドプレーヤーには、ボールの音や監督やガイドなど味方からの指示による「声」でのコミュニケーションをはじめ、相手選手の声も重要な情報です。
そのため、インプレー中は観客は静かに観戦することが求められます。しかし、ゴールが決まった時にはプレー中の分も込めて大歓声でたたえるのが「5人制サッカー」ならではの観戦マナーです。
「5人制サッカー」は、見えない中で音や声を聞きながらプレーします。
トップスピードでピッチを走り、キレのあるドリブルやパスの正確さ、そして見えているかのごとく狙いすましたシュートが見る人を魅了する障がい者スポーツです。
東京2020パラリンピックで日本が初出場する「5人制サッカー」。世界の強豪チームを相手に日本代表がどう挑むのか楽しみです。
みなさんも「5人制サッカー」を観戦してみてはいかがでしょう。