視覚補助具の分野においても、ICT機器の普及が顕著です。iPadに代表されるタブレット端末の教育現場での活用は目覚ましいものがあり、東京都や佐賀県の一部の市では既に全生徒に配布していて国は2020年までに「一人一台」にするのが目標です。
今やタブレット端末は、拡大鏡や携帯型拡大読書器に取って代わる勢いです。また、教科書データを読み込むことができるので、拡大教科書の代わりにもなり、電子黒板との併用で更に学習しやすい環境が整っていくと確信できます。したがって、タブレット端末の使用訓練にはロービジョンケアを行う医療者も積極的に関わる必要があります。しかし現時点では、目の疲れ具合や操作性などの観点から、長時間の学業や会社での業務には据え置き型拡大読書器に勝るものはないと考えています。
一方、盲導犬ロボットや無人自動車の開発が視覚障がい者の将来の安全な移動を約束していると言えます。 そして、最近の再生医療の著しい進化は、我々の身近なものになってきています。世界初、加齢黄斑変性へのiPS細胞の臨床試験では視力に変化はないものの、視野は広がったとの情報です。
このことは、日常生活動作の改善に期待できても、視力なら0.1程度が限界を意味します。したがって、視覚のリハビリテーションが術後早期に必要となります。これは、人工内耳手術後のリハビリテーションが言語聴覚士などによって行われているのと同様で、視覚の分野では視能訓練士の役割は一段と重要になるでしょう。
これら技術革新は視覚障がい者の生活を一新しますが、その分視覚リハビリテーションの必要性は増加し、その担い手である眼科スタッフの役割が鍵となります。そこには我々が患者さんや視覚障がいの方々をどのようにみているのかが重要になってきます。この「みる」には、「見る」「視る」「診る」「看る」そして「観る」などがありますが、医師は即時的に判断する意味合いで「診」ており、看護師はそばに寄り添って「看」ています。
検査や視能訓練を行う視能訓練士は、注意して分析するという立場で「視」ます。しかし、すべての医療者は患者さんを全人格的に、総合的にみる必要があり、「観る」がそれに当ります。私は医師主導の医療ではなく患者主導の医療がロービジョンケアには求められているとの考えです。
最後に、患者主導の医療がロービジョンリハビリテーションであることを強調して筆を置くことにします。