- 猪狩(いがり)ともか
1991年、埼玉県生まれ/アイドルグループ「仮面女子」「スチームガールズ」のメンバーとして活躍中。アリスプロジェクト所属。
2018年4月、強風で倒れた看板の下敷きになり脊髄損傷、両下肢まひに。5月ブログでケガの様子や車いす生活になることなどを報告。8月「仮面女子ライブ」のフィナーレ出演から活動を再開している。特技は料理、管理栄養士の資格を持つ。
車いす生活になって足の重要性がわかりました。
車いす初心者を卒業して、ライブを続けたいし、
パラスポーツにもチャレンジしたいです。
聞き手:西武ライオンズのファンだとお聞きしています。昨年はメットライフドームで始球式に登板していますね。今年もあるのですか。
猪狩さん:またお声がかかればうれしいですね。足で踏ん張れないから投球が大変ですけど、練習はしているので。
聞き手:日常生活でスポーツを行っている障がい者は2割くらいだそうです。私は休日に泳いでいますが、猪狩さんは。
猪狩さん:私も水泳を12年間習ってました。でも、事故後は、足が使えないとどうなるんだろうとか、トイレの不安とかがあって、まだ泳いでません。バスケット、パワーリフティング、テニス、ボッチャなどのパラスポーツに挑戦しましたが、自分に合うものを見つけて継続してやりたいですね。
聞き手:普段、ストレスがたまったりしませんか。
猪狩さん:私は趣味に逃げるタイプなので(笑)、野球、ドラマ、映画を観ていると和みます。家では家族にわがままを言っているので、そこでバランスがとれているのかな。家族には申し訳ないですけど。
聞き手:猪狩さんはすごくポジティブですね。足湯で足が動いたとブログに書かれていましたが、うれしい出来事がありましたか。
猪狩さん:初めて足湯をしたときに、左足の親指がぴくぴく動いて、右足の腿が少し動いたのを発見したんです。今まで微動だにしなかったのですごくテンション上がったんですが、そしたら「痙性(けいせい)」じゃないかと言われて。でも1回だけでなく、継続しているんです。
聞き手:動いたからといって足が動かせることにつながるわけではありませんが、自分の意思で動くようになると良いですね。ただ意思とは関係なく筋収縮が起きて勝手に動くことはありますね。ところで痺れはどうですか。
猪狩さん:痺れは常にあります。たまに強くなることも。不思議ですね、感覚がないはずなのに痺れはあるんです。最初は脚が凍っているのかなと思いました。また車いすユーザになってみて、以前は自然と足に力が入っていたんだと気づいたことがあります。たとえば、車に乗っていて、カーブで曲がるときです。今は意識しないと遠心力に負けて倒れてしまうので、車のグリップを握っています。意識していなくても足でバランスをとっていたんですね。車いす生活に慣れてくれば、長く座っていても大丈夫になると思うんですが。
聞き手:ご自身で車の運転はされないのですか。
猪狩さん:免許は持っていますが、まだ運転したことはないです。手だけでアクセル・ブレーキの操作ができる車は、運転練習したので操作を忘れる前にチャレンジしたいと思っています。
聞き手:自分で運転できると行動範囲が広がりますよ。私は自由に行動できるようになって無性に身体を動かしたくなりました。プールへ行ったり、飛行機で遠出したり、乗馬やスカイダイビング、イルカと泳いだり、ストレスがたまってくるといろいろなところへ出かけて発散していました。
猪狩さん:今はまだ体力がないので、ちょっと外出すると疲れてしまいます。パラスポーツ関係の仕事で車いす生活が長い方たちにお会いする機会が増え、自分がいかに車いすユーザとして未熟で、できないことが多いと痛感しています。だからと言って焦ることはない。いつかはみなさんと同じくらいになれるんだと思っていますので。
最初に「できた!」と実感したのは、自分でズボンをはけたときです。少しずつお尻を浮かしてズボンを上げる、を繰り返すことでうまくできました。お風呂はストレッチャーからシャワーチェア、高床の順に試してみて、高床式風呂に入ったときは全部自分でできました。環境さえ整っていれば何でもできるなって思いますね。
聞き手:パラリンピック関係のお仕事もされているのですね。弊社にもブラインドサッカーやブラインドマラソンの選手がいます。応援していただけたらうれしいです。さて、仕事のない日はどう過ごされていますか。
猪狩さん:リハビリに行ったり、マッサージを受けたり。高校2年生まで習っていたピアノを再開したので弾いて楽しんでいます。昨年の生誕祭では、ステージで披露したんですよ。
聞き手:ライブには特別な思いがあって復帰されたと思いますが、健常者のころのライブと、車いすユーザになってからのライブとでは大きな違いがありますか。
猪狩さん:ステップありきの振りなので、座りながらのパフォーマンスは難しいんです。これからライブ用の車いすを作ってもらう予定で、それができたらもっとかっこよくターンできるかなと思ってます。
聞き手:では最後に、10年後20年後はどうなりたいですか。
猪狩さん:家族は管理栄養士の資格を活かした道に進んでほしいと思っているらしいです。もちろん今はアイドル活動を応援してくれるんですが。でも、私としては、アイドルを卒業してもソロのタレントとしての活動や、作詞、講演などを続けたいと思っています。
聞き手:今後のご活動を応援しています。今回はありがとうございました。
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- インタビュアー 髙橋 豪
- 2016年、NTTクラルティに入社。ポータルサイト「ゆうゆうゆう」の編集員、障がい理解研修等の講師を務める。