映画「車線変更-キューポラを見上げて-」の国枝プロデューサー×青木脚本家インタビュー【前編】

写真:右側に国枝秀美さん、左側に青木江梨花さん、2名が並び笑顔で正面を見ている様子

写真:【タイトル】左上に「対談(前編)」、中央に2段に分けて「映画:車線変更-キューポラを見上げて-」と書かれている

簡単なプロフィール、左側に「青木江梨花さん、脚本家」と、右側に「国枝秀美さん、映画プロデューサー」と描かれている

障がい者にスポットを当てた映画が2020年度完成します。
この映画は、知的障がいのある子供たちのタレント活動を支援している国枝秀美さんがプロデュースし、脚本家として青木江梨花さんを迎えた作品です。今回この映画について、ゆうゆうゆう編集部員がお話しを伺いました。

映画のあらすじ:
舞台は鋳物で有名な埼玉県川口市。オートレーサーである主人公の野平幸助は「賞金王」獲得を目前にして、練習中の接触事故で足に障がいを負ってしまう。健常者の時には想像もしなかった多くの壁と周囲の憐れみに絶望するが、鋳物職人の父や、他のさまざまな障がいや国籍差別のある人たちと出会い、幸助の気持ちは変化していく。ある日、幸助は義足でロードレースに挑む唯と出会い、バイクから自転車に乗換え再びレースで頂点を目指す。

車いすユーザの編集部員が
映画についてインタビュー

写真:幸助役の平田雄也さんがオートバイに乗っている様子

聞き手:この映画には、原作となる物語があったのですか?

国枝:いいえ、フィクションです。けれど、私の今まで見たり、聞いたり、体験したりっていうのが全てつまった物語になっています。

聞き手:オートレースを題材にしたのは理由があるのでしょうか?

国枝:舞台となるのが私の地元である埼玉県川口市で、今の産業や風景を映像に残したくてロケ地にしたかったというのがあります。

青木:川口というと、オートレースと鋳物ですからね。前回の東京オリンピックの聖火台は川口で作られたんですよ。

聞き手:そうなんですね!青木さんは、今回の映画のような「障がい」をテーマにしたような脚本は書かれたご経験がありますか?

青木:障がい者を中心ということではなくて、あくまで登場人物の一人として書いたことはあります。けど、今回はかなり真正面から向き合って書いたので、私の中では初めての経験でした。

聞き手:青木さんは、「障がい」についてどのように向き合って脚本を考えたのでしょうか?

写真:笑顔で話す青木さんの様子

青木:私の場合、最初に人物の背景を作りこんでいきます。例えば、電車の中や街中で障がいのある人と出会った時「こういう時はどうしたらいいんだろう?」みたいな気持ちをたどっていくんです。主人公の幸助は事故で障がいを負いますが、今までの常識と障がい者にとっての常識との違いに揺れ動く心を描きました。
私自身が幸助と一緒に「障がい」について知識を深めていくみたいな感じにしようと思っていたので、脚本の半ば過ぎ位から国枝さんのお話しを参考にさせていただいたり、自分で調べたりしました。 ですから、物語の最初は私の感覚と幸助の感覚がリンクしている感じでした。

聞き手:フラットな状態で書き始めたということですね。

青木:そうですね。まずは幸助の戸惑いを描いていきたいと思ったので、そういう意味では私も幸助と一緒に成長できたかなっていう印象があります。

写真:幸助役の平田雄也さんが平行棒でリハビリをしている様子

無意識の偏見は小さい頃に植えつけられる!
それを取り払いたい

写真:国枝さんが話している様子

国枝:私が知的に障がいのある方たちと出会ったのは、日本初の知的障がい者施設を創設した人物を映画化した作品に参加した時でした。重度の知的障がいのお嬢さんがいらっしゃる監督の希望で、障がい者役に延べ300名ほど出演頂きました。
最初、冷静ではいられませんでした。障がいに対する知識がなく、周りにもいなかったので、どう接していいか全く分からず、ほとんどの出演者やスタッフさんたちも皆さん同じ状態でしたね…。けれど、交流会を開くことで子供たちと保護者の方々と一緒に触れ合うことができ、さまざまなことに気づきがあり、自信につながりクランクインできました。
今考えると、自分には福祉や障がいは関係無いと思っていました。健常の私のいる場所とは別の所なんだという変な意識があって、ふと気づくと私が勝手に見えない線を引いていたという感じですが、それが社会かもしれないと思いました。
でも、私たちは無意識の内にさまざまな障がいのある人と確かに出会っていると思いました。
だから、今回の作品は福祉の映画にはしないでエンターテイメントの映画にして、一般の方に見ていただきたい。その中にさまざまな障がいを盛り込もうと思いました。
結局、どのテーマを取っても一本の作品が撮れてしまうくらい奥が深いんです。

聞き手:各シーンで、さまざまなルーツのある人たちが登場するんですね。

国枝:この映画は、福祉の人たちとか、障がいのある人たちが見ても意味が無いと思います。それよりも「私は違う所にいるんだ」「私は関係無いですよ」という人たちにこそ見てもらい、何かを感じてもらいたいです。

聞き手:最初の国枝さんみたいに感じて欲しいってことですね。

国枝:そうですね。話し合うきっかけの一つになって欲しいです。特に今すごく思うのは、差別意識は子供の頃に植えつけられるのではないかと。
それを植えつけているのは、親や周りの大人たちのはずです。差別は、こんな時代でもまだあるから、そこに気づいて欲しいなと思います。結局、障がい者になると何かが変わると思ってしまう。けど、変わらないですよね?

聞き手:生活の仕方は変わりますが、それ以外は特に変わらないですね。

写真:知的障がいの子供タレントたちが、撮影を待っている様子
国枝秀美さん〈プロフィール〉
映画プロデューサー、埼玉県出身/映像の制作会社から大手広告会社勤務を経て独立。2007年に日本初知的障がい児・者の芸能プロダクションを立ち上げる。障がい者に関係する舞台や映像制作を行う一般社団法人「K’sスペシャルニーズエンターテイメント」代表理事。
青木江梨花さん〈プロフィール〉
脚本家、東京都出身/慶應義塾大学文学部卒業。2007年、脚本家デビュー。テレビドラマ、ラジオドラマ、映画や舞台等多くの脚本を手掛け活躍中。

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