ゆうゆうゆう編集部員座談会「障がい者の賃貸住宅探し」とは?

2022年02月15日掲載

来る春に向け、新生活をスタートさせるという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで今回は、障がい当事者である編集部員が、「どのように賃貸住宅を探したのか?」などをリアルに語りました。ぜひ、ご覧ください。

写真:二階建てのアパート、正面には駐車場がある

「賃貸住宅」選びの理想と現実

ごう: 写真:ごう編集部員、肢体不自由(車いすユーザ)、引っ越し回数4回 今回は、賃貸物件契約の経験がある編集部員で話を進めていきます。
ある調査によると、障がい者の居住形態を尋ねたら家族・親族との同居が約50%、一人暮らしが約40%位ということらしいです。
みんな一人暮らしだけど、賃貸住宅を選ぶ際に一番優先していることを教えて。

いけ: 写真:いけ編集部員、視覚障がい(全盲)、引っ越し回数4回 そうですね。私の場合、障がいを理由に断られることが多いです。だから、まず貸してくれるかどうかというのが一番のポイントです。極端な話、10件中9件は断られる位の印象です。
あと、私の場合はできるだけ道に迷わないよう、道順が分かりやすくて駅から徒歩10分以内の物件が理想的だと思っています。

かず: 写真:かず編集部員、聴覚障がい(人工内耳)、引っ越し回数2回 私もいけさんほどではありませんが、障がいを理由に断られたことがあります。
私の場合、人工内耳を付けているのでインターホンの音が鳴れば、その音を拾うことができるのですが、それだけでは誰が来たか分かりません。なので、モニタつきのインターホンがある物件だと嬉しいです。

ごう: なるほどね。車いすユーザだと、とにかく段差や階段がないことかな。あと、車を運転する人は駐車場も必須。
条件が多いせいか、障がいを理由に断られる前に住める物件がほぼない!高い家賃を出せれば別かもしれないけど、一人暮らしの人には現実的な家賃じゃないとね。 あと、人によってはスロープや手すりを付けたり、工事が終わらないと引っ越せないっていう場合もある。
そういう設備面で、2人は困ることないの?

いけ: ガスコンロを使うと火事を起こしてしまう不安があるので、IH調理器を使っていますね。
そのほかには、タイプにもよりますが、宅配ボックスが使いにくいこともあります。紙に暗証番号を残されても、その暗証番号が読めないので・・・。

かず: 私の場合は、宅配便が来た時に、たまにその音に気づけないことがあります。配達員に留守だと思われてしまうこともあるので、そういうとき宅配ボックスがあると嬉しいです。

ごう: なるほどね。自分は宅配ボックスがある物件に住んでた頃、車いすだと手が届かなかったり、届いても重さによっては運ぶのが難しい場合があった。だけど、管理人さんがいたから、諸々助けてもらってた。
あと、困るのが洗面台やトイレのドアの上に付いてるドアクローサーかな。ドアが全開できなくて、車いすでの移動がしにくいから、今住んでいるところは外してるんだよね。

写真:IH調理器で卵焼きを作っている、インターホンに来客者が映っている、扉からドアクローサーを外してドアを全開している

「不動産屋さんと大家さん」に求めることとは?

ごう: 物件は、自分で探してた?

かず: 2回の内1回は両親と一緒に探しました。1回目は両親から手話通訳してもらいながら探しましたが、2回目は一人で探しました。特に1回目の場合、不動産屋さんとのやりとりは電話対応のみでしたので、親の電話番号を教えました。今だとメールやチャットでの対応もあるかもしれませんね。
あと、窓口にも筆談器とか音声を文字変換してくれるものがあると嬉しいですね。

いけ: 私は基本的に一人で探します。インターネットで良さそうな物件を見つけたら、取り扱ってる不動産屋さんにすぐ電話します。ただ、内見に行くには不動産屋さんに誘導してもらわなければなりません。
そのため、自分の障がいについて事前に説明しますが、おかげで内見に行く前に大家さんからほぼ断られるんですよね。 あと、もちろん不動産屋さんにもよりますが、目が見える人と一緒に行くと、見える人にばかり話をするのでこちらが話に入れないなんてこともありました。
ガイドヘルパーさんと一緒に行くこともできるんですが、内見は急に決まることが多くヘルパーさんとの調整が大変なので、結局一人で探しています。

ごう: 自分もいけさんとインターネットで探すところまでは一緒!だけど、物件はまず見つからない。
最近、不動産情報サイトでも「バリアフリー」の検索項目を見かけるけど、チェックすると「0」になっちゃうんだよね。「この項目意味ある?」って、いつも思う。
あと、バリアフリーの基準がサイトや人によっても違うせいか、バリアフリーの物件と言われて内見しに行ったら「どこがバリアフリーなんだろう?」ってことがある。だから、とにかくあきらめずに探すしかないよね。
それでも比較的、築年数が新しくて部屋数がある程度あれば、バリアフリーに近い作りのところが多いかもしれない。それと、内見がリモートで見られるところが増えてきたから、現地に行くのが難しい人には嬉しいと思う。

写真:会議室で話し合っている編集部員たち

かず: 聴覚障がい者も、わざわざ自分で行く必要がなくなるので、自分で見て確認ができるのでいいですね。
あと、チャット機能などで質問などがリアルタイムでできるというサービスがあれば嬉しいです。

いけ: リモートができるなら、できそう!
視覚障がい者は、手探りで部屋の位置関係や広さなど、一通り触ってみないとだめですね。聴覚障がい者は、契約で困ることない?

かず: 契約書の文章を読めば分かるので、特に問題ないですね。

いけ: 自分の場合は、全部の項目というわけではないのですが、主な項目は読んでもらう必要があります。
契約書に自分でサインが出来ない人は代筆してもらいますが、サインができる時は自分で書くし、ハンコの場所も教えてもらって捺印します。だから結構時間がかかっちゃうんですよね。

ごう: それはしょうがないよ。2人は、賃貸住宅供給促進法(住宅セーフティ制度)っていうのがあるけど知ってる?

かず&いけ: 知らない。聞いたことない。

ごう: 障がい者・高齢者・子育て世代・被災者・低所得者などが住宅を借りる時に困る人が多いから、そういう人たち向けに作られた制度で、月収158,000円以下の世帯が対象なんだよね。今、公共住宅は少なくなってるけど空き家は増えているから、貸す側や借りる側に補助金を出して問題解決につなげようみたいなことらしい。

かず: そのような人たちだと貸してくれる物件がないし、困りますからね。

いけ: 選択肢が増えて欲しいですよね。住めるはずの物件なのに断られるのは困りますからね。ごうさんの場合は、住めるはずの物件を探すのが難しいと思いますが・・・。

写真:各編集部員たちのバストアップ

ごう: けど、2人が「障がいを理由に断られたことがある」って聞いてびっくり!自分は、たまたま運が良かったせいか、そういう経験はないんだよね。

いけ: 以前に断られた理由で「バリアフリーじゃないんで」って、断られたことがあります。
視覚障がい者は、階段があってもいいし、「今まで階段のあるところに住んでいました」って、説明しても「心配だから」って意味不明な理由を言われたこともあります。

ごう: 大家さんで思い出したけど、10年位前に東京にドカ雪が降った時、前職で夜遅くまで帰らせてもらえないことがあったんだ。
ノーマルタイヤで大雪が降る中、何度もタイヤをスリップさせながら、なんとか駐車場に車を停めたまでは良かったんだけど、雪が積もってって降りられなくてどうしようって思ってたら…。向かいに住んでた大家さんが、自分が帰ってくるの待っててくれたのかな?すぐに飛んできて雪かきをしてくれて、マンションまで車いすを押してくれたことがあった。
最後は人なんだなって、その時思ったな。

かず: やっぱり、貸してくれる人の気持ちが一番大事ってことだと思います。

いけ&ごう: そういうことだね。

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