2017年04月11日掲載
3月1日、東京都多摩市に就労継続支援A型事業所(注)が運営する日本初のスポーツカフェバー「E’s CAFE(イ一ズカフェ)」がオープンしました。障がい者雇用と障がい者サッカー・スポーツを普及させるため、誰もが交流できる空間を目指しています。
今回は、このスポーツカフェバーを運営する一般社団法人パラSCエスペランサ代表理事の神さんに、お話しを伺いました。
(注)「就労継続支援A型事業所」とは
企業等に就労することが困難な障がい者と雇用契約を結び、就労に必要な知識及び能力向上のために必要な訓練支援を行う事業所のことです。
「E’s CAFE」について
一般社団法人パラSCエスペランサが就労継続支援A型事業所として運営するお店です。
日本財団の「はたらくNIPPON!計画」の取組みで、地域に根ざした障がい者就労支援モデルを構築する「モデル構築プロジェクト」の一環として設立されました。
パラSCエスペランサは、サッカーやスポーツを通じて、誰もが排除されることなく対等に交わる自立したプレーヤーが活躍できる社会をめざし、子どもたちの放課後支援教室などを実施している団体です。
今回オープンした「E’s CAFE」は、フットサルコートの隣にあり、サッカーと食事やお酒を楽しみながらみんなが交流する場所であり、障がいのある人が当たり前に働く場所となることを目指しています。
店舗の概要
- 店舗名:
『E’s CAFE (イ一ズカフェ)』
-LUNCH CAFE & SPORTS DINING BAR- - 所在地:
東京都多摩市落合ニューシティ多摩センタービル8階 - TEL:
042-311-2022 - 営業時間:
LUNCH:11:00から15:00
DINING & BAR:15:00から21:30(L.O.21:00)
月曜・日曜 : 17:00から21:30(完全予約制) - Es’CAFE(新しいウィンドウが開きます)
マネージャーさんからのコメント
誰もが憧れるようなオシャレでかっこいいカフェバーを目指しています。
たとえば、店内の装飾に黒板チョークアートを使ったり、パラリンピック種目や障がい者サッカー7競技のパネルを飾ったりと工夫しています。
障がい者サッカーや障がい者スポーツに少しでも興味を持ち、知ってもらえる場所にしていきたいです。
サッカーを通して自立できる場所を作りたい
Q:
スポーツ施設に隣接したカフェで、障がい者を雇用しているのは珍しいですよね。
「E’s CAFE」を始めたきっかけについて教えてください。
A:
私は、脳性まひ7人制サッカー(CPサッカー)のチームエスぺランサでマネージャーをしていました。
NPO法人として活動をする中で、練習する場所がないという問題とぶつかりました。
サッカーをする人であれば、誰もが自分たちの練習場を持ちたいと考えます。
私たちも同じような夢を抱くようになりました。
その練習場所となるグラウンドをCPサッカーの選手や障がいのある人たちで運営できたらいいなというのが発端です。
Q: なぜ、スポーツカフェバーだったのでしょうか?
A:
カフェであれば、様々な業務があり、障がいのある人が、色々なかたちで働くことができると思いました。
それによって、仕事と練習の両立ができると考えたことも理由の一つです。
スポーツ施設が隣接しているので、サッカーの練習をしやすい環境にあります。
仕事があってしっかりとした収入があっても、サッカーをする時間が取れない場合もあります。
逆に、サッカーを楽しむ時間は十分にあるけれど、収入が十分になく、サッカーをする場所への交通費も工面できない場合もあります。
この2つを同時に満たしたいと思いました。
Q: それはどういうことでしょうか。
A:
私は当初、仕事の傍らボランティアとして活動していましたが、やはり限界を感じるようになりました。
「これがやりたい」ということがあっても思うようにいかないことが多かったのです。
それなら、支援を仕事としてできれば効率的だと思いました。
ただ、その仕事として事業を立ち上げるには資金が必要になりますので、どうしたらいいか悩みましたね。
そこを日本財団とのご縁で、プロジェクトの一つにしていただくことができました。
Q:
なるほど。障がい者を支援していくためにはボランティアだと限界がありますが、日本財団とのご縁で良い方向に進めることができたのですね。
スポーツと障がい者雇用というスタイルは少ないかと思います。
何か参考にされたのですか?
A:
数年前、CPサッカーでオランダに遠征する機会がありました。
訪れた街が、障がい者雇用に積極的なところだったのです。
そこで入ったカフェがすごくオシャレで、障がいのある人たちが普通に働いていました。
楽しく明るく働いて、身近にサッカーができる場所があったら理想的だと思いました。
また、海外のサッカー場の多くに、クラブハウスが併設されています。
お酒を飲みながらみんなでサッカー観戦ができる場所です。
それらを兼ね揃えた場所を作りたいと思いました。
Q: どのようなカフェにしていきたいと考えていますか?
A:
そうですね。一番は障がいのある人たちが明るく楽しく働き続けられるようなカフェにしたいです。
また、スポーツ施設が併設されているので、働くスタッフがスポーツをする機会を増やしたいですね。
障がいがあるとなかなかスポーツをすることが少ないと思うので。
スポーツをすることにより、常に健康であれば、仕事を休むことなく続けられると思います。
そして、昨年、障がい者サッカー連盟が設立され、盛り上がってきているので、仕事をしながらサッカーを続けられるという環境を作っていきたいです。
そのためには、働く障がい者の給与を10万円以上にできるよう、十分な利益を確保することも必要になります。
Q: 最後に、今後の展開についてお聞かせください。
A:
今、放課後支援教室エスペランサNEXTやCPサッカーチームには、たくさんの子どもたちが在籍しています。
今後は、もっとこのような子どもたちが増えるよう、活動拠点を広げていくことや、サッカーを楽しむだけでなく、その先に、自立できる場所、働ける場所も同時に作っていきたいと思います。
E’s CAFEについては、いつでも、誰もが気軽に集まり、スポーツ観戦をしながら楽しめて、障がいのある人がその中に自然と溶け込んでいるそのような愛されるカフェバーにしていきたいです。
一般社団法人パラSCエスペランサ
〒212-0055 川崎市幸区南加瀬3-4-3クアルトビル2F
一般社団法人 パラSCエスペランサ(新しいウィンドウが開きます)
2015年2月27日設立
神一世子 代表理事
平成28年12月に厚生労働省から発表された、就労継続支援A型事業所の平均賃金(月額)は、66,412円でした。
神さんのお話しにあったように「お金はあるけどサッカーをする時間がない」「時間はあるけれど、サッカーを続けるためのお金がない」といったもどかしさがあります。
「Es’CAFE」は、スポーツを通して障がいのある人たちの自立と社会参加を後押ししています。
取材当時は、採用に向けた面接中で、実際に働いている方に話を聴くことはできませんでしたが、好きな仕事をしながらスポーツも楽しめる!そんな誰もが憧れる素敵な職場が、もっと身近に増えていくとうれしいです。