みなさんは大学といえばどんなことを思い浮かべるでしょうか?
大学生活は学業だけでなく、新しい経験や人々との出会いを通じて、興味の方向性や将来の目標を見つけられるところが大きな魅力です。
しかし、聴覚に障がいのある人は、講義を受けたり、サークル活動を楽しんだりすることにさまざまなバリアがあるかもしれません。そこで今回は聴覚に障がいのある人に特化した筑波技術大学の産業技術学部をご紹介します。
筑波技術大学 産業技術学部とは
筑波技術大学の産業技術学部は、聴覚障がい者のために茨城県つくば市に設立された国立大学の学部です。
産業技術学部は、産業情報学科と総合デザイン学科の2つの学科で構成されています。
産業情報学科は支援技術学の工学部分や情報科学などが学べ、総合デザイン学科はクリエイティブデザイン学や支援技術学のデザイン分野について学べます。
また、情報と機械、建築分野はデザインから始まることに着目し、聴覚に障がいがあっても、モノづくりのアイデアを可視化し、PCソフトを用いてシミュレーションするなど、聴覚に障がいがあっても視覚的な表現を活かすことができる学部です。
筑波技術大学 産業技術学部についてはこちら(新しいウィンドウが開きます)
入学試験での配慮
試験の際には、指示する内容をスライド投影し、視覚的に伝達すると共に、音声・口話・手話で伝達しています。
また、補聴器や人工内耳等の装用が認められています。
大学入学共通テストでは、外国語(英語)のリスニングは免除ができます。
さらに面接では、受験生が希望する方法でコミュニケーションをとることで、受験生が伝えやすい方法で試験を受けられるように配慮を実施しています。なお、コミュニケーションの方法は、オープンキャンパス等で相談することが可能です。
講義での配慮
個人ごとにコミュニケーション方法にばらつきがあることから、音声主体や手話主体など、各自の方法に合わせたコミュニケーションが用いられています。
そして、常勤の教員は手話も使用しており、学生が発言する際には、全員に見える形で手話をするなど、全員がいつも内容を理解できるような工夫がされています。
また、講義ではグループディスカッションが多く用いられています。色々な場面でのディスカッションを繰り返すことで、それぞれのグループに適した伝達方法を学生自ら探っていく力を身に付けられるようになっています。
サークル活動
フットサル、バスケ、バレーボール、ダンス、軽音、ソフトウェアの開発サークルなど、15個以上あります。
寄宿舎
始業や終業を知らせるチャイムや非常時の警報が分かりやすいよう、各所に点滅ライトやケーブルテレビが設置されています。
その他、宅配便が来たときに、ボタン一つで伝えたいメッセージが表示される設備、字幕付きAEDが設置されています。
就職支援
学生一人一人に対して、就職担当教員に加えてキャリアサポーターが個別にフォローします。
面接については、学生本人または会社から相談があることが多く、コミュニケーション方法や面接方法の提案を行っています。学生本人から企業に配慮を申し出る際のアドバイスも行っています。
加藤教授からのコメント
聴覚障がいはコミュニ
ケーションの障がいといわれる側面があります。その一方で、周囲と円滑にコミュニケーションできる方法を身に付ければ、自分がいる組織のコミュニケーション力を飛躍的に高められます。
外国人・新人・復職した人など多様な人がいて状況がつかみにくいときに、キーパーソンになれるのが、日頃からコミュニケーションを円滑にする方法を知っている聞こえない・聞こえにくい人であろうと思っています。
そういった「本人がいることでコミュニケーションのユニバーサルデザイン化が図れる」人材を育てることは本学の一つの使命としていて、実際に、卒業生にはそのような人が非常に多く、企業内で活躍している話をよく耳にしています。
今回は産業技術学部をご紹介しました。
産業技術とデザイン分野の学習のほかに、組織やチームのコミュニケーション力を高める人材に成長できる所は非常に魅力的だと思いました。
また、国際交流を目的として海外の姉妹校に行くことがあります。その際は現地の手話を身に付けてから行くようですが、日本語の手話が堪能であれば海外の手話も簡単に身に付けられるようです。
気になった人はぜひ調べてみてはいかがでしょう。