2024年10月22日掲載
今回ご紹介するのは「スマイルサッカー教室」です。ここでは、子供たちが「障がいの有無・経験の有無などを問わず」思いっきりサッカーを楽しむ体験を通じて共生社会の実現をめざしています。
この活動では、全ての子供たちが自分らしくサッカーを楽しめるよう、田中三千太郎さん(通称:ミッチーコーチ)がコーチをしています。
CPサッカーのコーチでもある編集部員が「スマイルサッカー教室」に参加し、ミッチーコーチにお話を伺って来ました。ぜひ、ご覧ください。
「スマイルサッカー」とは
障がいの有無、経験を問わず、誰もが楽しめるインクルーシブなサッカーです。
足の速い子供、遅い子供、サッカー経験者、未経験者が一緒になって楽しめるように、参加者に合わせてルールを変える工夫を加えたサッカーです。例えば、ゲームでボールに触れない子供にはもう一つのボールを与えたり、大きな声を出す選手には「みんなに声が聞こえて良い」と認めてあげるなど、一人ひとりが笑顔になれるサッカーです。
「スマイルサッカー教室」を始めたきっかけ
きっかけは、ミッチーコーチと当時小学校4年生だった杉山詩音さんとの出会いです。脳性麻痺のある彼女はサッカーが大好きでしたが、左の手足に麻痺があり危ないという理由から練習をさせてもらえませんでした。
「みんなと一緒にサッカーがしたい!サッカーチームに入りたいけど、入ったことがない」という声を聞いたミッチーコーチは、一念発起!誰でも参加し、練習ができる「スマイルサッカー教室」を2019年に立ち上げました。
地域には運動がしたいけどできない子供や、運動をさせたいけど通わせる場所が無い親御さんがいるはず。このような人たちに「スマイルサッカー教室」を活用してもらい、やり方を変えればサッカーは誰にでもできるということを、地域に浸透させたかったのです。現在は、幼児・小学生・中学生以上のカテゴリを対象に東京都府中市周辺で毎週開催しています。
「スマイルサッカー教室」の目指す未来
「スマイルサッカー教室」を知ってくれた人に「頑張ってね」より「僕も手伝っていい?」と言ってもらえるようになることです。そして、「スマイルサッカー教室」に賛同し、次は一緒に参加してもらい活動の輪を広げることで、より多くの子供たちを「スマイル」にすることです。
スマイルサッカーを楽しめる場所「スマイルサッカー教室」についてはこちら(新しいウィンドウが開きます)
「スマイルサッカー教室」が大事にしていること
それは参加者である子供たちに、サッカーを通して笑顔になってもらうことです。
教室では最初に参加者一人ひとりにボールを渡しています。まずは、一人でボールを思いっきり投げたり、ボールを持って走ったり、自分の好きなようにボールに触れてもらうためです。
そうして参加者の「ボールで遊びたい」という気持ちが満たされたところで、その日のメニューをコーチから伝えます。ただし強制はせず、あくまで参加者の気持ちを優先し、練習メニューに取り組んでもらいます。
練習メニューは、「やることは一緒、やり方はいろいろ」の考えです。例えば、シュート練習では参加者の技能に応じて「初級コース」、「中級コース」、「上級コース」で3つのコースに分かれます。そこで大事なのは、参加者自身でどのコースで練習をするか決めてもらうことです。
参加者たちは、選んだコースで練習し、心の中でそのコースを満たしたら自分から次のコースを選びます。コーチは、その一人ひとりの気持ちに寄り添い、励ますなどして声がけるすることを大事にしています。
参加した子供たちのコメント
- 広いグラウンドで思い切り走れた
- たくさん声をかけてもらって嬉しかった
- 「スマイルサッカー教室」をきっかけで積極的に人前へ出られるようになり、学校の生徒会長に立候補するほど前向きになりました。日本代表になることが目標です。
子供を参加させた親御さんたちのコメント
- 子供がのびのびと楽しく身体を動かせる
- 経験者も初心者も関係なく楽しめる工夫がいろいろ感じられた
- 普段は家の中でほとんど話さなかった子供が「スマイルサッカー教室」をきっかけに家に帰って話をしてくれるようになって、家の中が明るくなった
ミッチーコーチ
- 2008年から海外でサッカーを通して教育に携わる
- 2015年からプロサッカーチームのギラヴァンツ北九州のコーチに就任
- 2017年からFC東京でコーチとしてインクルーシブサッカー事業の企画/運営を担当
- 2024年現在は、独立しサッカーコーチ兼プロジェクトマネージャーとしても活動している
「スマイルサッカー教室」に参加している子供たちの多くは、「サッカーができる環境が無い」「障がいを理由にチームへ入れてもらえない」「親がケガを心配して運動させてくれない」など、さまざまな理由でサッカーができなかった子供たちです。
「スマイルサッカー教室」は、そんな子供たちの想いから生まれたのです。
好きなことを思いきりやることの楽しさやチャレンジ精神を子供の頃から経験できるということは将来、大きな力になるのではないでしょうか。
障がいのある子供たちにサッカーを教えている私からしても、考えた練習メニューや企画したイベント内容を参加者によって変更する姿は、子供たち個々の気持ちを大切にしていて印象的でした。
楽しみながらサッカーができる「スマイルサッカー教室」。将来はここから日本代表になる選手が出てくるのではと、楽しみです。