障がい者が高い壁を登る「パラクライミング」

みなさんは、「パラクライミング」というパラスポーツをご存じでしょうか?
人気急上昇中のスポーツクライミングは知っているけど、パラクライミングは知らないという方が多いかもしれません。
「パラクライミング」は、障がいのある選手が15mほどの壁を登り、誰がより高く登ることが出来るかを競う競技です。
2028年に開催されるロサンゼルスパラリンピック競技大会では、追加競技として初めて採用されることが決まり、注目度が高まっています。また、日本代表チームは、これまでの国際大会で数々の金メダルを獲得して強豪国とも言われています。
今回は、日本パラクライミング協会の小林代表理事と、車いすユーザの畠山選手にお話を伺いました。ぜひ、ご覧ください。

写真:身体に障がいのある選手が腕の力のみで壁を登っている

「パラクライミング」とは

「パラクライミング」とは、障がい者が行うクライミング競技です。
「視覚障がい」と「身体機能障がい」のクラスがあり、さらに各障がいの程度によってクラスが分かれます。
トップロープと呼ばれる、壁の頂点から下がるロープで安全確保を行う仕組みを用いるのがスポーツクライミングのリード種目との違いとも言えます。
障がいがあっても自身の身体能力と頭脳で限界に挑戦できる競技です。

「パラクライミング」のクラス分け

「パラクライミング」では他のパラスポーツと同じように、公平性を確保する観点から、障がいの程度に応じてクラス分けが行われます。
視覚障がい者、上肢・下肢機能障がい、関節可動域や筋力の障がいなどに基づいて分類されます。

視覚障がい者:
・光覚や視力・視野によってB1からB3までのクラスに分けられます。
身体機能障がい者:
・上肢機能障がい(AU2・AU3)
・下肢機能障がい(AL1・AL2)
・関節可動域と筋力の障がい(RP1・RP2・RP3)

(注)数字の小さいクラスが障がいの程度が重いクラスです。

対象となる障がい
筋力障がい
受動的な関節可動域の障がい
手足の欠損
脚の長さの違い
低身長
筋緊張亢進
運動失調
アテトーゼ
視覚障がい

小林代表理事からのコメント

写真:小林代表理事のバストショット「パラクライミング」は、誰が見てもわかりやすい競技です。壁をどこまで登れるかという非常にシンプルなルールが基本となっているのが特徴とも言えるスポーツです。また、多様な障がいがある方たちもできるということも魅力の一つです。障がいがあっても健常者の方と同じ壁を使い、大きく前傾した壁に配置する人工の石(ホールド)の配置を変え障がいに応じたルートを登り競います。
現在、国内の競技人口は120名ほどです。競技大会では、40名ほどが参加しているのですが、協会としては育成と普及が課題です。
次のパラリンピックの追加種目にもなったことで、競技人口がもっと増えて欲しいと思っています。
特に国内の競技大会では女子選手は男子の約4分の1ですが、今後は男女比も同じ位に改善したいです。
パラリンピック効果として、障がい者もクライミングができると言うことを広く社会に知ってもらえるようになることが期待できますが、金メダルを獲ることだけが唯一の価値ではありません。
なぜなら、「パラクライミング」を一生の友として、スポーツを通じ人生に彩りを与えることこそが、真の価値だと思っているからです。

問合せ先

正式名称:一般社団法人日本パラクライミング協会
住所:〒180-0002 東京都武蔵野市吉祥寺東町4-11-6 NPO法人モンキーマジック内

一般社団法人 日本パラクライミング協会についてはこちら(新しいウィンドウが開きます)

畠山選手からのコメント(下肢機能障がい:AL1クラス)

写真:壁を登ろうとする直前の畠山選手畠山選手は、車いすユーザです。2018年に「パラクライミング」を始め、すぐに競技に夢中になったそうです。
翌年には初めて参加した国内大会で3位に!2022年には、50歳にしてワールドカップ初出場を果たし、あっという間に世界レベルの選手へと成長しました。
下肢機能障がいのため、足をつかわず腕のみで登るスタイルは、腕力のみならず体重のバランスが求められます。
冗談交じりに「足の悩みが無いので心配は半分!」という畠山選手は、いつもポジティブな精神の持ち主です。

今後の目標は、ワールドカップや世界選手権で上位の成績を残し、2028年のロサンゼルスパラリンピックでメダルを獲得すること。
写真:畠山選手が表腕をあげてガッツポーズをしている パラリンピックの追加種目になったことで多くの人がパラクライミングを始め、国内のライバルも増えていくことが想定されます。
そのため、ますます練習に励みたいと意気込んでいます。

イラスト:編集後記

写真:編集部員がパソコンを前に小林代表理事とオンライン会議を行っている壁を攻略したいというチャレンジ精神は、目が見えなかったり、体の動きに制限があったりしても変わらないのかもしれません。
残された体の機能を最大限に引き出し、目標ルートを次々に突破していくことが「パラクライミング」の醍醐味です。
私が今回の取材で一番驚いたのは、「パラクライミング」にハンデは存在しないということでした。
障がいがあるからといって、何か特別ルールがある訳ではありません。
右側上下に麻痺が残っている私も、パラクライミングに挑戦したいと思ったのですが、高所恐怖症の私に15mの壁は高すぎました。その分という訳ではありませんが、「パラクライミング」を応援していきたいと思います。
今からロサンゼルスパラリンピックが楽しみです!

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