2015年11月17日掲載
芝生や土の路面、砂利道、砂浜などは、車いすでの移動は困難です。
そのような環境であっても、スムーズに移動できる車いすの補助装置「JINRIKI®」があります。
そこで今回、「JINRIKI®」生みの親である、株式会社JINRIKIの代表取締役中村社長にお話を伺いました。
防災対策として災害時での要援護者の避難・移送の場面での使用も期待されている「JINRIKI®」を、障害者総合支援法の特例補装具として認めてもらうよう取組んでいます。
「JINRIKI®」を多くの人に使ってもらうために
聞き手:今回、「JINRIKI®」が各自治体によっては「日常生活用具」や「特例補装具」として判断されるようになったそうですね。
どの様な経緯があったのですか?
中村社長:介護保険制度の居宅サービスの一つ「福祉用具の貸与」の対象にはすでになっていました。
しかし、障害者総合支援法の制度において、「JINRIKI®」は日常生活用具、補装具の対象ではなかったのです。
したがって、補装具として購入にかかる費用は、全額自己負担となってしまいます。 できるだけ多くの方に使用して頂くためには、やはり助成金の対象となることが一番と考え、各地域で講演や勉強会を積極的に行ってきました。 その一つとして、障がい者に理解のある国会議員の方を中心に、幾度か勉強会を開催しました。
東日本大震災以降おしはかられてきた防災対策や、平成28年度施行の「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(以後、差別解消法という)を踏まえ、役立つのではないかと考えたからです。
聞き手:反響はどうでしたか?
中村社長:多くの共感を得ることにいたり、国会議員の先生方から相当数の協力をいただける事になりました。
「各種災害において、迅速な避難が可能になる」という意見があり、障害者総合支援法の「日常生活用具」「特例補装具」としての申請ができるようになったと思っています。
まだ全国とはいきませんが、特例補装具において更生相談所の判定により市町村に認められてきています。
聞き手:それは障がい当事者として嬉しいことです。利用するためには自己負担が少ないに越したことはありませんから。
私も利用できるのでしょうか?
中村社長:先ほどもお話ししたように、まだ国として適用されているわけではありません。
理解が進んでいない自治体も複数あります。まずは、お住いの自治体に問い合わせをしてみてください。
または、厚生労働省の対応窓口に聞いてみることをおすすめします。
「JINRIKI®」今後の展開について
聞き手:「JINRIKI®」は災害時だけではなく、日常生活においても役立つと考えますが、いかがでしょうか?
中村社長:差別解消法の施行もあることから、対応策を求められる方がいらっしゃると思いますので、利用機会は増えるのではないかと考えています。
聞き手:具体的には、どのような場所での利用が想定されるでしょうか?
中村社長:国立公園・特定公園や世界遺産、文化遺産などの観光地を想定しています。すべてをバリアフリー環境とすることは現実的に難しいですが、管理者は何らかの対応が求められます。 そこで、未整備の場所での移動が可能となる「JINRIKI®」が一役を担うと考えています。 実際、今年の夏、北海道夕張市にあるマウントレースイスキー場の山頂へ、総勢120名(車いす利用者15名)で登山を行いました。
「JINRIKI®」を利用して、階段や草木が生い茂る傾斜30度の登山道を登り切り、1名もあきらめることなく登頂できました。
この様なことが実際に可能であることを多くの方に知っていただきたいと思っています。 また、2020年開催の東京オリンピック・パラリンピックでは、用品の提供というかたちで協力したいと考え、文部科学省、パラリンピアンズ、障がい者スポーツ協会、東京オリンピック実行委員会と協議しているところです。
海外から大勢の人が訪れる、東京オリンピック・パラリンピックで使用され、海外の方に認知されることも期待しています。 途上国では、道路環境等が未整備な所がまだまだ多いですし、その様な所ほど必要に迫られている方が多いと考えているからです。 そのためにも製品を安価に提供できる仕組みも考えています。
たとえば製作・販売を国内・海外を問わず他社にまかせてパテント料だけを頂くということも念頭に入れています。
聞き手:中村社長、今回は色々とお話を頂き有り難うございました。
ぜひ「JINRIKI®」が多くの方に利用されることを願うとともに、社長の活躍を期待しております。
「JINRIKI®」は以前「ゆうゆうゆう」にて掲載しました(参考:けん引式車いす補助装置「JINRIKI®」)
今回は直接、中村社長にお話を伺うことができました。
「JINRIKI®」を通じて、障がい者への配慮、法制度、たとえば差別解消法に対する考え方などについてなど、貴重なお話を伺うことができました。 特に印象に残ったことは、「JINRIKI®」の海外展開の話です。 日本と比較してみても、バリアフリー環境が未整備な途上国においてこそこの製品の必要性は高いのではないでしょうか。
そのためには、もっとコストパフォーマンスを上げなくてはと考えておられた点です。
困難なこととは思いますがぜひ実現することを願う限りです。