2016年10月11日掲載
10月1日と2日、富士通スタジアム川崎(Jリーグ川崎フロンターレ運営)を舞台に「第6回日本アンプティサッカー選手権大会2016」が開催されました。
最近では、「ブラインドサッカー」や「CPサッカー」がテレビや新聞などの各メディアで取り上げられるなど、障がい者サッカーの認知度が広がりつつあります。
その中で、新しい障がい者サッカー「アンプティサッカー」が少しずつ普及してきています。
そこで今回は、「アンプティサッカー」について今大会の模様と合わせて、ご紹介します。
アンプティサッカーとは
主に上肢、下肢の切断障がいのある選手がプレーするサッカーのことです。
競技では、日常生活やリハビリで使用しているロフストランドクラッチ(注)と呼ばれる松葉づえ(クラッチ)が使用されます。
多くの障がい者スポーツが専用の器具を必要とする一方、このスポーツは、日常で使用している松葉づえさえあれば競技を行うことができます。
足に障がいのある方にとって、最も気軽に楽しめる魅力的なスポーツと言えるのではないでしょうか。
このスポーツが考案されたのは、1980年代。
アメリカ人の切断障がい者であるドン・ベネット氏が、偶然ボールを蹴ることにより思いつきました。
以後、アメリカ軍負傷兵のリハビリの一環として採用されるようになってから急速に世界各地に普及しました。
日本においては、2008年に元アンプティサッカーブラジル代表の日系3世のエンヒッキ氏が来日したことをきっかけに普及活動が始まり、当事者を中心に楽しまれるようになりました。
現在、国際アンプティサッカー連盟(WAFF)には30か国以上が加盟しています。
(注)ロフストランドクラッチ(英語: Lofstrand Crutch)とは、医療用補助器具の1つで、前腕部支持型杖とも呼ばれ、腕に装着して使用する片手用の杖である。介護・リハビリ用の歩行補助器具として使用される。
アンプティサッカーのルール
基本的には、通常のサッカーと同様のルールで進められます。
以下は、アンプティサッカー特有のルールです。
- フィールドプレーヤー6名とゴールキーパー1名の計7名で行う競技である。
- フィールドプレーヤーは基本的には下肢切断者、ゴールキーパーは上肢切断者が担当する。
- 切断側の四肢を使用する事は禁止されている。
- フィールドプレーヤーは移動のために松葉づえを使用するが、この松葉づえをボール操作に使用することはできない(故意に触れた場合はハンドとなる)。
- ゴールキーパーはペナルティエリアから出ることはできない。
- タッチラインをボールが割った場合は、スローインではなくキックインでゲームが再開される。
- フィールドプレーヤーは転倒した状態でボールを蹴ることはできない。
- オフサイドルールは適用しない。
- 選手交代は何回でもできる。
- 国際大会での試合時間は前後半25分の、計50分間で行われ、その間に10分間のハーフタイムがある。
第6回日本アンプティサッカー選手権大会2016
主催 : | 特定非営利活動法人 日本アンプティサッカー協会 | |
共催 : | 川崎市 | |
会場 : | 富士通スタジアム川崎(Jリーグ川崎フロンターレ運営) | 試合形式: | 【第1日】 参加全チームを2グループに分けリーグ戦方式 |
【第2日】 ブロック順位による順位決定戦トーナメント戦方式 |
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試合時間: | 前半25分 ハーフタイム10分 後半25分、計60分 | |
競技規則: | 日本アンプティサッカー協会の競技規則による | |
詳しくは : | 日本アンプティサッカー協会についてはこちら(新しいウィンドウが開きます) |
大会結果
順位 | チーム |
---|---|
優勝 | FCアウボラーダ |
2位 | FC九州バイラオール |
3位 | 関西Sete Estrelas |
4位 | Asil Bee千葉・北海道(合同チーム) |
5位 | TSA FC |
6位 | 広島・静岡(合同チーム) |
最優秀選手に選ばれたエンヒッキ選手のコメント
今日は、朝起きた時から「絶対勝つ」と思って試合に臨みました。
失点しても取り返すと思っていたので、点を決められたことは良かったです。
それと、チーム全員が同じ気持ちでいて、それぞれがいいプレーをして勝つことができたと思います。
アンプティサッカーは、まだあまり知られていないスポーツですが、 子どもや女性などもプレーするようになり、少しずつ広がってきています。
障がい者サッカーではありますが、一番一般のサッカーに近いスポーツだと思います。
シュートやフェイントなど、非常に迫力があるところが魅力の一つです。
これからワールドカップなどの大会が開催されます。前大会は、21か国中11位でしたので、 次はベスト4を目指したいと思います。
こうした大会を開催して日本での認知度を上げて 世界に通用するレベルにしたいです。
そして、パラリンピックの正式種目になることを願っています。
今回は、アンプティサッカーを紹介しました。
日本選手権は、FCアウボラーダの2年ぶり2度目の優勝で幕を閉じました。
前年度覇者FC九州バイラオールを逆転で下しての快挙です。
MVPに輝いたのは、決勝戦ですべてのゴールに関わったエンヒッキ選手。
ブラジル生まれの彼は、日本にアンプティサッカーを伝えた本人でもあります。
試合を観戦して感じたのですがドリブルやフェイント、シュートなどの技術はきめ細かく、健常者サッカーにも決して劣りません。
またルーズボールでも一生懸命追いかけ、諦めない姿勢がとても印象的でした。
そして、このサッカーの最大の魅力は、クラッチさえあれば健常者でも参加できるという点です。
障がいの有無に関わらず誰もが楽しむことができます!
しかし、知名度があまり高くないことや、フィールドを確保することが難しいことなど、課題も山積しています。
現在、国際アンプティサッカー連盟には、日本を含め30か国ほどが加盟しています。
国内での一層の盛り上がりとともに、世界全体においてさらに普及していくことを期待しています。