治療の一環としてスポーツに取り組んだ患者の85%の人が、社会復帰したなどの海外の報告も後押しし、障がい者のスポーツは治療だけでなく、社会参加の重要なツールとして推進されてきました。
東京パラリンピック開催から約50年が経ち、たとえば、前回取り上げた精神障がい者など障がいとする範囲だけでなく、治療や社会参加を目的とする以外の競技スポーツといった側面にも広がりを見せています。
特に、2011年に施行されたスポーツ基本法(スポーツ振興法から改定)において、障がい者のスポーツの推進が明記されたことは、我が国の障がい者のスポーツ史において重要な転換点となりました。スポーツ基本法を分かりやすく言えば、我が国のスポーツの法律です。スポーツ基本法に、障がい者のスポーツ推進が明記されたことは、スポーツとして法的に認知されたことを意味します。
とはいえ、2012年一般社団法人日本パラリンピアンズ協会が実施した「第2回パラリンピック選手の競技環境(その実態と意識調査)」によれば、英国やオーストラリアなどではオリンピック選手とパラリンピック選手が同等のスポーツ支援があるにも関わらず、日本においては、パラリンピック選手にはオリンピック選手と同等支援がないことが明らかにされました。さらに言えば、パラリンピック選手でさえもスポーツ施設の利用を断られるといった経験があることもわかりました。
スポーツ政策学においては、「スポーツにおける公共性の担保」は重要な論点になりつつあります。言い換えると、「すべての人がスポーツに挑戦し楽しめる社会の構築」が、近年のスポーツ界の政策課題として認識されています。しかし、障がい者のスポーツというレンズを通してみると、すべての人にスポーツにおける公共性が担保されていないことは、様々な研究にて報告されています。スポーツが文化として継承されるためにも、スポーツ政策学は、こうした公共性の担保に貢献することがより求められるでしょう。