2017年12月26日掲載
ファッションの発信地として名高い原宿に、フラワーショップとカフェが併設された「ローランズ原宿店」があります。
ここは株式会社ローランズが運営する就労継続支援A型事業所(注1)で、障がいのあるスタッフが明るく元気に働くお店です。
今年5月に、日本財団の「はたらくNIPPON!計画」(注2)との共同プロジェクトでオープンし、テレビなどでも取り上げられました。
今回は、「ローランズ原宿店」についてご紹介します。
(注1)企業等に就労することが困難な障がい者と雇用契約を結び、就労に必要な知識及び能力向上のために必要な訓練支援を行う事業所のこと
(注2)地域に根差した新事業を全国につくりだす「モデル構築プロジェクト」で、日本財団の新しい就労支援の取り組みの一つ
ローランズについて
株式会社ローランズは、花と緑を扱う企業で、就労継続支援A型事業所を運営し、障がい者を積極的に雇用するほか、一般就労を目指す障がい者のジョブトレーニングなども行っています。
代表の福寿さんは大学生のときに特別支援学校に教育実習に行きました。そこで、障がいのある生徒たちの進路に、受け入れ先がなく困っている課題があることを知ります。
その後、花の仕事で独立。障がいのある人にフラワーアレンジメントを教える機会がありました。その時、花を扱う仕事は障がいのある人に適していると気づき、以前実習先で感じていた「障がいのある人の進路」と考えが結びつきます。福寿さんの社会貢献活動をしたい気持ちから「株式会社ローランズ」は設立されました。
現在、川崎、駒込、原宿の3店舗があり、全店舗で障がい者が働いています。
【株式会社ローランズの概要】
代表:福寿 満希
設立:2013年2月1日
従業員数:60名
株式会社LORANS.(新しいウィンドウが開きます)
花と緑に癒され、障がい者が明るく元気に働く「ローランズ原宿店」
原宿駅から徒歩5分の場所に「ローランズ原宿店」があります。
周辺は住宅街と落ち着いた雰囲気。
お店の前には観葉植物が並び、店内にも緑があふれていて癒される空間です。
障がいのあるスタッフの業務として、カフェ部門、フラワー部門、ウェブ部門、配送部門の4つがあります。
- カフェ部門…接客、調理、バックヤードでの食材の仕込みなど
- フラワー部門…接客、アレンジメント制作など
- ウェブ部門…受注管理業務、販売データの管理・分析など
- 配送部門…お客様への配送、市場からの生花運搬など
月曜から日曜の1日4時間のシフト勤務で、週休2日制です。
各部門には、社会福祉士などの資格を持った職員が支援をしています。
障がいのある先輩スタッフが新しく入ったスタッフに教えたり、より良くする方法を職員と一緒に考えます。
【ローランズ原宿店の概要】
- 所在地…東京都渋谷区千駄ヶ谷3丁目54-15 ベルズ原宿ビル1F
- 営業時間…11:00から19:00
- 働く利用者…20人
- 障がい種別 精神障がい、身体障がい、知的障がい、難病など
働くスタッフから
島村さん(強迫性パーソナリティ障がい)
家が近くて、A型事業所で働けるということで入社しました。
私の業務はキッチン全般で、調理をしたり、レジを担当をしたり、バックヤードで作業をしたりしています。
これまで一般就労をしていましたが、体調や能力面などで厳しい面がありました。
ローランズは、障がいに対して理解があり、とても働きやすいです。
お客様はA型事業所であることを意識せず、障がい者にも自然と接してくれるのが嬉しいです。
今後、自分のできることにチャレンジして定年までローランズで働きたいと思います。
斎藤さん(統合失調症)
就労支援センターからの紹介で、A型事業所で働きたいと思ったことがローランズで働くきっかけです。
私の業務は、キッチンで主にオープンサンドやスムージーを作ることです。
最初は、「間違えたらどうしよう」とすごく緊張しましたが、調理をこなしている中で覚えていくようになり少しずつ自信が持てるようになりました。
自分が調理したスムージーなどが売れていくとうれしいです。
今後は、レジを担当することや、キッチンやバックヤードの仕事もして、何でもできるようになりたいです。
支援する立場から
支援員として働く田中さんは、ご自身もネフローゼ症候群という難病で障がい当事者です。
障がいスタッフと接し、日々感じていることを伺いました。
【田中さんからのコメント】
私は今年の夏ごろからローランズで働いていますが、障がいのあるメンバーと接して、まず感じたことは、みなさんもともと持っている能力が非常に高いということです。
今は主にウェブ部門を見ていますが、デザインやプログラミングなどもパッと作ってしまう方もいます。
ただし、能力は高いけれど、ご自身の障がいと、働く事との丁度良いバランスをコントロールできていない方も多いなと思いました。私はそのあたりのバランスを取る方法などを一緒に考えたり、働き続けるためのサポートをしています。
最近は自らの判断で風邪を引きそうなときに休みを取ったり、早めに自分で調整できるようになっていると感じます。
現在、精神障がいの方の割合が多いのですが、周りのメンバーをケアすることによって、自分が癒されて具合が良くなっていくことに気付いた人もいます。
どちらかというと私は手取り足取りというよりは、自分で考えて行動する事の大切さを伝えています。
代表がよく言っているのは、障がいに対して「配慮はするけど特別扱いはしない」、転ぶ前に手を差し伸べることはせず、痛みからも学ぶという考え方です。
失敗からも学んでもらったり、自分で考え行動したことにより、成功することで自信をつけてもらいたいと思っています。
そうすることで、みんなが生き生きと働くようになると思うのです。
お客さまも、A型事業所と知っている方は「明るくていいですね」と言ってくださいますし、知らずに来る方はかなり驚かれますね。また、代表はよく「福祉を売るのではなく、サービスで勝負したい」と言います。
障がい者だからかわいそうと憐れんだりという気持ちではなく、ここのスムージーがおいしくて好きだからとか、お花のアレンジが好きだからとか、接客が好きだからとか、そういう当たり前のことに価値を見出していきたいです。
これからは、こうした考えに同じように賛同していただける企業が増えて、花と障がいがマッチしていることに気づいてもらい、花の業界や福祉の業界も変えて、社会の流れを変えられるような、そうした役割を果たしたいですね。
そして、障がいのある子供たちが夢を描く手助けをローランズができたらうれしいです。
若いうちから将来の仕事について考えられるように、花に触れる環境を作り、選択肢を増やしたいと思います。
目標は障がいのあるスタッフを100名採用すること。もっと若い頃から花のスキルを身につけて社会で活躍出来る方を育成するアカデミーの創設をすること。私たちの強みを活かした花と緑の仕事で社会貢献していきたいと思います。
障がい者の働き方はさまざまあります。
今回伺った「ローランズ原宿店」は、スタッフみなさんが明るく笑顔だったことが印象的で、それぞれ自分の考えを持って仕事に取り組んでいると感じます。
そして支援員、スタッフの方々が同じ仲間として対等に接しているのだと思いました。
お互いが尊重し合っているからこそ雰囲気が良くなり、お客様にとって自然で居心地のよい場所と感じるのかもしれません。
原宿という都心にあるので、ぜひ近くへ行った際には足を運んでみてはいかがでしょう。