2018年10月17日掲載
2018年6月1日、日本財団パラリンピックサポートセンター(以下パラサポ)が、パラスポーツ専用施設「パラアリーナ」を開設しました。
この施設は、2020年東京パラリンピックに向けて、障がいのある選手が日々のトレーニングに専念するための施設です。
今回、視覚障がいのあるゆうゆうゆう編集部員が「パラアリーナ」を取材してきましたのでぜひご覧ください。
パラアリーナの概要
パラアリーナは、公共交通機関や車でのアクセスが良い好立地の船の科学館敷地内にあります。
ゆりかもめ線の「船の科学館駅」から徒歩5分で、駅からのルートは、段差もなく点字ブロックが敷かれています。
駐車場は広く、車いす用スペースが27台あり、1台分の幅が広いので、車いすの乗り降りもラクラクです。
所在地:船の科学館敷地内(〒135-0092東京都品川区東八潮3-1)
開館時間:9:00から21:30(利用時間:9:30から21:00)
休館日:不定休
料金:無料
対象
- パラリンピック競技団体
- パラリンピック競技団体所属のクラブチーム
- パラリンピック競技団体所属の個人
- パラサポが認めるパラスポーツの普及啓発に関する団体
※当アリーナを利用されるチーム・個人は全て事前に登録が必要となります。
パラアリーナについてはこちら(新しいウィンドウが開きます)パラアリーナの特徴
パラアスリート専用のスポーツ施設ということからバリアフリーに配慮され広々とした造りとなっています。
その上で、ゆうゆうゆう編集部員が感じた特徴をご紹介します。
◯エントランス
入って一番目を引くのが壁一面に飾られているレゴです。
こちらは香取慎吾さんがパラサポのオフィス用に描いた壁画をなんとレゴブロック約15万ピースを使って再現したものです。
その下には、パラサポのキャッチフレーズ「i enjoy! 楽しむ人は強い」が白文字で書かれ、
入ったときにわくわく感がでるようなデザインです。
壁と床は、白と黒でコントラストを強調し、視覚障がい(弱視)の人に配慮しています。
入り口は多少の段差がありますが、車いす選手などが移動しやすいように幅広いスロープを設けています。
その他、車いすに乗ったまま水が飲める冷水機や氷が取りやすい引出タイプの製氷機を完備しています。
◯アリーナ
バスケットボールコート2面程の広さで、車いすラグビー、車いすバスケットボール、車いすフェンシング、ブラインドサッカー、CPサッカー、ゴールボール、ボッチャなどの競技を行うことができます。
コートは4面に分けて使うことができるよう、それぞれ「G」「O」「L」「D」で区切ることが出来るほか、
それぞれの競技を行う際に必要なラインが引かれているので、すぐに練習ができるところがポイントです。
また、車いすユーザーが開閉しやすいよう入り口の扉はスライド式に、コーナーにはクッションをつけてケガをしないように工夫されています。
その他、他の施設では競技中床についてしまった松ヤニやタイヤの跡など選手自ら清掃を行いますがここでは施設スタッフが清掃してくれるため、時間ギリギリまで練習できることや、体温調整が難しい選手のために、大型の空調設備が競技に影響しないよう高い位置に設置するなど様々な配慮がなされています。
◯トレーニングルーム
車いすに乗ったまま利用できるラットマシン、ハンドサイクルマシン、ベンチプレス台、ローイングエルゴメーターなど盛りだくさん!
一般のジムにあるマシンが並んでいます。
床はフラットで移動もスムーズです。
◯ミーティングルーム
パーテーションを使って部屋の大きさを変えることができ、小人数でも対応できるようになっています。
アリーナに設置されている固定カメラの映像を見て、フォーメーションの確認、自身の動きを確認するなど
チーム戦略から競技改善など、幅広く活用できます。
◯ロッカールーム
男女それぞれあります。
広い部屋の中は、車いすでストレスなく移動できるようになっています。
ロッカーは、車いすのまま出し入れできるようになっていて、用途に合わせて大小とサイズを選ぶことができるようになっています。
洗面台は、車いすのまま使えるよう洗面台の下は空いていて、位置も低めです。
また手すりが左右どちらでも使えるようになっています。
シャワースペースは、シャワー用車いすに乗ったままシャワーが浴びれるように、両サイドから水が出てきます。全身浴びることができると、車いす選手から好評のようです。
また、車いすから移動して利用できるようマットを置いていたり、シャワー用車いすがあったりと、
使う人がそれぞれ選べるように対応しています。
◯トイレ
トイレは、男女それぞれ扉の色を変えていたり、点字で記載したりと工夫されています。
また、多目的トイレは、車いすユーザでも使いやすいように広い作りになっているほかオストメイト対応にもなっています。
パラアリーナ担当者から
この施設は、パラリンピックサポートセンターに所属する競技団体のパラアスリートたちから練習する場所がないという声を聞いてできた施設です。
パラスポーツは、練習する場所が限られてしまいます。
その理由として例えば、車いすラグビーは松ヤニを滑り止めとしてグローブに塗るのですが、それが床についたり、車いすのタイヤの跡やキズがついたりして、一般の体育館から利用を断られるケースがあります。
そのような声を受けて、パラアスリートたちが2020年に向けて練習に取り組めるようにしたパラスポーツ専用の施設です。
そのため、こちらの利用は、パラリンピック競技団体、そこに所属するクラブチームまたは個人、パラサポが認めるパラスポーツの普及・啓発に関する団体と限定しています。
そもそも、海外では障がい者も一般の人と同じようにどこにでもある施設でスポーツを楽しんでいます。
日本ではそれがなかなか難しい現状があるので、まずはこうしたアスリート専用のスポーツ施設を作って、パラスポーツについて、いろいろな人に知ってもらうことが必要だと思っています。
先日、東京パラリンピック2年前イベントを開催して、この場所を一般開放しました。
この施設のことやパラスポーツを知っていただくのはもちろん、企業や地方自治体の方々に、今後施設を建てる場合のバリアフリー設備や配慮事項などの参考にしてもらいたいというのも狙いです。
今、2020年に向けて、多くの人たちが確実に、よりよい環境・社会を目指そうと意識しています。
その流れで、誰もが使いやすい施設が全国各地どこにでもあることが理想ですね。
私たちは、そうした下づくりをサポートすることがミッションになります。
これから「パラアリーナ」をどのように活用していくかを考えながら、将来的に障がいの有無に関わらず、誰もが気兼ねなくスポーツ施設を利用し、一緒にスポーツを楽しめる社会にしたいと思います。
パラスポーツ専門の施設「パラアリーナ」は、パラ選手にとって必要不可欠な練習場所だと思います。
そして、一番感じたことは、障がいのある人にとってさりげない工夫が随所にあったことです。
障がい者用の施設ということで、バリアフリーになっているのはもちろんですが、 障がい者用の器具ではなく、これなら障がいのある人にも便利という製品が導入されていました。
例えば、シャワー設備は一般的に売られているもので、当事者からの声を参考にしたそうです。
視覚障がい(弱視)の私にとって、コントラストで工夫している部分はわかりやすく、それがスタイリッシュなデザインになっていて障がい者向けとは感じさせないところが魅力的でした。
ただ、ロッカーに目印がなかったのですが、それはすでに意見をもらっていて検討中とのことでした。
ゴールボールの選手が使っているとのことでしたので、改善されるといいなと思います。
取材した日は平日でしたが、車いすラグビーのクラブチームが練習していて、
本気で2年後に向けて取り組んでいることを感じました。
まずは、こうしたパラスポーツ専門の施設があることを知らないと、
パラスポーツ自体が広がっていかないと思います。
パラサポの担当者の方がおっしゃったとおり、本来はこうした施設がなくても、 いつでもどこでも誰もがスポーツを楽しめるようになるとうれしいですね。