2019年07月17日掲載
パラリンピックが始まった1960年ローマ大会から正式競技として採用されている人気競技「車いすバスケットボール」。巧みな車いす操作でわずかなスペースを潜り抜けていくスピード感、接触や転倒の迫力感、片輪を浮かすティルティングやピック&ロールといった華麗なテクニックなど、通常のバスケットボールとは違った面白さがあることから人気を得ています。
近年では、健常者も選手としての出場が認められるなど、競技人口増加のための対策のほか、東京2020パラリンピックに向けて知名度向上の取り組みも進められています。
そこで今回は、車いすバスケットボールについてご紹介します。
「車いすバスケットボール」とは
下肢障がい者を対象とし、専用の車いすに乗って行うバスケットボールです。
ボールやコートのサイズ、ゴールの高さや出場人数など、基本的なルールは健常者の競技と同じで、ボールを持って車いすを手で漕ぐ操作を連続で3回行うとトラベリングとなります。
また、車いすバスケットの特長として「クラス分け」というルールがあります。
「クラス分け」とは、残存する障がいの程度や運動能力によって、重い人から順に1.0点から4.5点まで0.5点刻みで8クラスに分けられるルールです。それぞれのクラスによって車いすの形状が少しですが違ってきます、背の低い車いすから背の高い車いすまで様々です。
なお、試合にはコート上の5選手の合計点を14.0点以内で構成する必要があります。このことによって障がいや身体能力による偏りがなくなり幅広い選手起用につながっています。
車いすバスケットボール見どころ!
車いすバスケットボール見どころはなんと言っても
・スピーディーな車いす操作でディフェンスをすり抜けシュートを決めていく展開の速さ。
・美しい放物線を描き決まるシュートの正確性。
・選手同士の激しいぶつかり合いや勢いあまっての転倒などのアグレッシブ性。
が見どころとなります。
また、コート上で戦う選手は5人で構成されますが、すべての選手の状態が同じというわけではありません。
片手両足切断の選手もいます。出場する選手の障がいの程度に差があることも醍醐味の一つです!
そのような選手がどのように車いすを操作しているのか、そのプレイスタイルと緻密な戦略に基づいたチームワーク、局面を打開するような個々の能力も見どころとなっています。
・注目のテクニック
このようなテクニックを目のあたりに!
・重度の選手(ローポインター)が軽度の選手(ハイポインター)の行く手を阻みシュートチャンスを発生させない。
・軽度の選手(ハイポインター)が身体バランスを活かし片輪を浮かしてコースを作ってからシュートを放つ。
などによって観戦がより楽しくなりますよ。
「スクリーンプレー」
相手選手のディフェンスをローポインタが壁となってブロックし、味方ハイポインターのシュートを助けるというバスケットボールの基本戦術。
「ピック&ロール」
ローポインタが壁となって相手選手の動きを止め、生まれたスペースに味方ハイポインターがすばやく移動してパスを受け、シュートを決めるコンビネーションプレー。
ルールとクラス分け
時間制限
攻撃側は、審判にボールを渡されてから5秒以内にスローインを行い、ボールが渡ってから8秒以内に相手コート内に運ばなければなりません。また、ボールを保持してから24秒以内にシュート行うことや攻撃中はフリースローライン内に3秒以上留まってはいけないなど制限時間があります。制限時間を超えてしまうとボールの所有権が変わります。
主なファール
基本的に、選手同士の激しい接触プレーは禁止されています。相手を押したり叩いたり掴むとファールになります。車いすも体の一部と見なされるため相手の車いすを掴むこともファールです。1人の選手が一試合に5回ファールをしてしまうと退場になり、その試合には出場することができなくなります。
トラベリング
バスケットボールを保持した状況で車いすを3回連続で操作するとトラベリングとなります。
片手で操作した場合も1操作となります。
車いすが転倒したときの対処
試合中転倒した場合、自力で起き上がらなければなりませんがそれができないときは、審判の判断で試合が中断され、選手やスタッフがサポートを行い起き上がります。ボールを保持して転倒したときは相手チームのスローインから再開されます。
クラス分け
車いすバスケットボールの試合に出場する脊髄損傷や切断などで下肢に障がいがある選手は、クラス分けされ障がいの程度に応じて持ち点が付与されます。
クラス分けは実際に競技観察がされ決められます。車いすの操作、ドリブル、パス、ボールコントロール、シュート、リバウンドなどの動作、接触プレイ時の身体の反応など、基本的なバスケットボールの動きで見られる身体能力に応じて1.0から4.5点に分類されます。
0.5ポイントの刻みは、それぞれのクラスで上位の運動機能を有する選手に対しプラスされます。いずれのクラスでも残存能力には個人差があり、また不全麻痺(注)等のプレイヤーも含まれるため、一概に損傷部位で持ち点を決定するのではありません。
(注)不全麻痺とは:麻痺には軽いものから重いものまでありますが「麻痺はあるが少しは動く」状態
クラスの一例 | 障がいの対象と状態について |
1.0 | 腹筋・背筋の機能が無く座位バランスがとれない重度な脊髄損傷者などが対象です。 そのため、背もたれから体を離したプレイができません。 |
3.0 | 下肢にわずかな筋力の残存がある脊髄損傷者や両大腿切断者などが対象です。 前方への体幹の動きがよく、手を使わずにすばやく上体を起こすことができます。 |
4.5 | 軽度の脊髄損傷や片膝下切断者などが対象です。 体幹バランスがあり全方向に安定して動くことができます。攻守にチームの中心となる存在です。 |
詳細についてはこちら「一般社団法人 日本車いすバスケットボール連盟」をご覧ください。
「日本車いすバスケットボール連盟」(新しいウィンドウが開きます)
2020東京パラリンピックで行われる開催場所
世界最高峰の障がい者スポーツとなるパラリンピック競技、なかでも車いすバスケットボールは高い人気となっています。2020東京オリンピック・パラリンピックでは2つの会場で行われる予定です。 日本は男子がトロント1976大会から11回連続出場を果たしており、過去最高は7位。東京2020大会ではメダル獲得を期し、スピーディーな攻守の切り替えを武器とする「トランジションバスケ(速攻)」を強化しています。
有明アリーナ
有明北地区に新しく整備されているアリーナで、15,000席の観客席を備えています。
武蔵野の森総合スポーツプラザ
東京スタジアムに隣接する場所に新しく整備された施設で、10,000人以上の観客席、メインアリーナを備えています。