障がいのある人は、どこでどういう仕事をしているの?と思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。
一般企業や特例子会社(注)、福祉作業所など、働くスタイルはそれぞれ違います。
今回は、日本航空株式会社(JAL)の特例子会社である株式会社JALサンライトをご紹介します。
働いている人たちに、同じ特例子会社のゆうゆうゆう編集部スタッフがインタビュー取材してきました。工夫していること、日々感じていることなどを伺ってきましたので、ぜひご覧ください。
(注)障がい者の雇用促進を目的に設立され、障がい者が働きやすい職場環境が整備された会社です。
特例子会社で雇用されている障がい者は、親会社の法定雇用率に算定することができます。
株式会社JALサンライトについて
日本航空株式会社の特例子会社として1995年に設立。
従業員455名のうち障がいのある人は207名です。聴覚障がい者、肢体不自由者、視覚障がい者、知的障がい者、精神障がい者などさまざまな人たちが働いています。
主な業務
- 空の旅を支える業務(航空輸送を支える業務)
- 航空券類審査、客室乗務員・運航乗務員サポート
- 社員の仕事を支える業務
- 渡航サポート、事務サポート、受付・総務
- 社員の日常、ライフプランを支える業務
- 給与・福利厚生、カフェ運営、マッサージサービス
事業所
- 天王洲本社ビル、羽田空港、成田空港
JALサンライト「天王洲ビル」の職場レポート
今回は天王洲本社へ伺いました。
まず、総務や給与・福利厚生などの業務を行っているところへ。
ここでは、JAL本社スタッフ、JALサンライトのスタッフが一緒に働いています。
障がいのある社員たちが、溶け込んでいる印象を受けました。
続いて、社内メーリング、名刺作成、PDF化業務、各種事務手続きのサポートなどを行っているところです。こちらはJALサンライトの社員だけがいる場所でした。主に知的障がいの社員が中心で、聴覚障がいの社員がリーダー的な役割をしていたり、それぞれに分担して業務を行っています。とても明るく元気なところが印象的でした。
次は、主に退職者などの各種事務手続きなどを行うところです。
セキュリティの関係上、他とは少し離れた場所にあり、集中して業務を行うという環境でした。
それでも、私たちが伺うと笑顔で対応してくれました。
続いて、視覚障がい社員が働くマッサージルームへ。こちらは9月にできたばかりです。
南国を思わせる雰囲気でリラックスしてマッサージを受けられそうでした。施術を受けた社員の方々は、リフレッシュして仕事も捗るのではないでしょうか。
次は、カフェ「SKY CAFE Kilatto」です。主に知的障がいのある社員たちがコーヒーやカフェラテなどを作っています。
ハンドドリップで、じっくり丁寧に入れているためとてもおいしいと好評で、いきいきと業務を行う姿にパワーをもらう人も多いようです。
カフェスペースは開放感があり見晴らしも抜群で、ホッと一息つくのに最適!
トップインタビュー!障がいのある社員と接して感じること
JALサンライトの真行寺社長に、社員や今後のJALサンライトにかける思いを語っていただきました。
弊社では、本社業務と変わりないところ、弊社のために業務を切り出しているわけではないところが他の特例子会社と違う部分だと思っています。
設立当時の背景に、航空会社が構造改革を迫られた経緯があり、給与計算や福利厚生などシェアードサービスセンターとして機能させることと同時に障がい者雇用を進めることが求められました。
そこからJAL本社からの出向者とJALサンライトの障がい者で総務センターというグループ会社も含めたシェアードサービスを効率的に担っていく会社になったのです。
3つの事業所で働く障がい者はそれぞれ違い、人数が年々増えています。そうすると一緒に働く人たちの理解が必要になります。
そこで、公認心理士1名、精神保健福祉士5名、社会福祉士1名の専門スタッフを配置し、常時、面談や相談を行えるようにしています。そして、3つの事業所には約100名のビジネスサポートスタッフ(BSS)を支援する見守り指導者(約30名・多くは時短勤務)が活躍中です。また、聴覚障がい社員が多く、手話通訳士も指導者として活躍しています。昼休みや終業後に手話教室を開催したり、みんなで手話検定の集団受験をしています。手話検定については、合格者には受験料の補助、また合格した人を社内HPに掲載しています。結構な人数が受けてくれて、私自身も何とか4級合格しました。
各事業所では手話を交えて朝礼や連絡事項を伝えるなどそれが風土というのでしょうか、自然になっているというのがありますね。コミュニケーションを取りたい、そういう気持ちが強いのでしょうね。
私も耳栓をして、同じ立場で手話をしてみたのですが、そうすることで気づくことなどたくさんありました。よく聴覚障がいの人は、わからなくても「わかった」と答える人が多いと聞きます。周りがわかっているのに自分だけがわからないと、何度も聞き返すのは申し訳ない気持ちになり、つい「わかった」と言ってしまうものだなと耳栓をしてみて初めて思いました。
その他、弊社は知的障がい者が多数います。カフェで働く自閉症の社員に、「ありがとう」と言っても反応がなかったのですが、「嬉しい!もっと仕事がしたい」と喜んでいたと聞いて、きちんと向き合わないと知らないままで終わってしまうと感じました。その人の立場になること、接することが大事だと思います。
これからの弊社は、事業を拡大して障がい者雇用を進めていくのはもちろんですが、どのように定着を図るかという点に力を入れていきたいと考えています。
そのためには、まずJAL本社の社員たちにも障がいについて知ってもらうことが必要だと思います。ダイバーシティと掲げていても全く知らないことがほとんどです。
カフェの運営を始めたことは、障がい者と触れ合ういい機会になり、さらにマッサージルームを天王洲ビルでも始めましたのでふれあうチャンスにしていきたいと思います。そして、障がい者だけでなく弊社で働いている人たちが、ここで成長していける職場なのか、周りの協力を得て達成感や幸福感が得られる職場となっているかなど、それらが働き続けるために欠かせない重要なポイントだと思っています。
また、知的障がいの社員の自立を促していくために、ご家族と面談をして職場と家庭の情報共有をしています。 やはり、一人一人がやりがいをもって仕事に生活にメリハリをつけていくことが安心して働き続けることにつながると思います。
技術革新が進められている中、ITを業務に活かすことを考えていますが、もっと障がい者の日常生活にも役立てられれば、働く場も広がっていくと思っています。
JALサンライトで働く社員の方々からのコメント
Aさん
入社のきっかけは、面接のときに、社員の方々が丁寧で親切だったことです。
現在の業務はJAL本社の受付をしています。制服を着用できたことが誇らしく思います。
業務でメールや電話対応などがありますが、私は電話対応が難しいので他の人にお願いして助けてもらう場合もあります。
これからも色々な場面に直面すると思いますが前向きにチャレンジしたいです。そしてJALグループの社会貢献活動として、さまざまなスポーツ大会のボランティアなどに参加していきたいです。
自分自身のため、誰かのためになることを続けていきたいと思います。
Bさん
収入関連業務をしていますが、お金を取り扱う仕事は初めてでした。失敗もありますが、周りの先輩社員の方々が優しく教えてくれて、今ではできるようになりました。業務の中でメールを書くことが多く、言葉の壁にぶつかりますが、失礼のないように他の人のメールを参考にするなどの工夫をしています。
今後は、仕事の知識と経験が足りないので、そうした面をしっかり積んで「できる人」になりたいです。個人的には、興味のあることにチャレンジして、できることを広げて仕事につなげたいと思います。
Cさん
退職した方々からの問い合わせ対応業務をしていて、そのときに「すごくわかりやすかった」など感謝してもらえると、うれしくやりがいを感じます。
入社してから今の職場ですが、障がいについては言いにくい部分がありました。しかし、自分が思っているほど周りは気にせず普通に接してくれるところがよかったです。
視覚障がいのため、紙資料を見ることが難しく、パソコン上の画面を把握することが大変というのがあります。一緒に内容を確認したり、パソコンを操作したりとサポートしてもらい助かっています。
今後は、障がいの有無に関わらず、誰もが働きやすい職場の環境調整ができたらと思います。そして将来的には、知識や経験を積み重ねて社員のサポートに回れるようになりたいです。
企業情報
社名:株式会社JALサンライト
本社所在地:〒140-0002 東京都品川区東品川2-4-11 野村不動産天王洲ビル
営業時間:平日休日で営業時間が変わります。
伺ってみるとみなさん、気持ちよく元気にあいさつされていました。
これは、周囲の方々と日々コミュニケーションを取っているからだと感じます。
真行寺社長のお話にあったように、例えば聴覚障がいの社員が、手話教室の講師として積極的に参加しているのは、「多くの人と話をしたい」という気持ちがあるからだと思います。働く社員からも、周囲の方々が自然とサポートしてくれるという声が多かったです。
JALサンライトは、航空会社で旅行などをサポートするということから楽しさや夢を一緒に運び、自然と笑顔になるのかもしれません。
そうした雰囲気が、社員がいきいきと働くことにつながっていると思いました。