2020年07月28日掲載
新型コロナウイルス感染症の流行により、生活や働き方に大きな変化の波が押し寄せています。
ウェブを利用したテレワークを導入する企業が急速に拡大し、国や自治体から支給される助成金の多くがオンライン申請に限定されるなどインフラとしてのウェブの存在はかつてないほど大きくなりました。しかし、ウェブは開通すればすぐに使える水道などと違い様々な障壁が存在しているのが事実です。
- WEBアクセシビリティ職人「見習い君」と「師匠」がアクセシビリティな世界を目指す
- このストーリーは、新人ウェブアクセシビリティ職人「見習い君」とベテラン職人「師匠」、解説を担当する「秘書」を通して特に障がい者をはじめ身体的な制約がある方たちがウェブ利用時にどの様な障壁にぶつかり、どの様な工夫をして克服しているかなど「ウェブアクセシビリティ」の実例をはじめ「ウェブアクセシビリティ」と共に重要な「社会的アクセシビリティ」についても紹介していきます。
「ウェブアクセシビリティってなに?」
見習い君:師匠、そもそも”ウェブアクセシビリティ”の “アクセシビリティ”ってどんな意味なんですか?
師匠:そこからかいっ!?
アクセシビリティというのは、障がい者や高齢者を含むすべての人々が交通、施設、機器などの「近づきやすさ」「利用のしやすさ」「便利であるか」を表す意味なんだよ。
見習い君:あのぉ いまひとつ良くわからないのですが・・・。
師匠:それじゃ見習い君は、今までに日常生活を送るうえで何か不便を感じたことはなかったかい?
見習い君:あっ あります!学生時代、脚を骨折して3カ月くらい松葉杖生活でした。
家の中でも外でも移動や生活がとても大変でした。
誰にでも起こりえる!
日常生活の変化でアクセシビリティを強く意識する事例
~急なケガで松葉杖生活~
秘書:脚を骨折してしまうと痛みや治療もつらいものですが、本当につらいのは日常生活だと言われています。歩行ができるまで概ね3カ月から半年ほどかかり、その間の移動手段はほとんどの人が松葉杖です。
家庭内では、小さな段差でも障害になり、立つ、座る、扉を開ける、入浴など普段は何気なく行っていることが大きく制限されます。また外出時には、常に転倒の危険性があり、移動自体が体力的にも精神的にも大変過酷で強いストレスが掛かります。
師匠:それは大変だったね。
君はその時に”アクセシビリティ”を身をもって学んだと思うよ。
見習い君:ん・・?
ただただ辛かった記憶しかありませんが・・・。
師匠:君が経験したことは、建造物におけるアクセシビリティ(建物と、建物に至る経路において、高齢者や障がい者を含む誰もが、支障なく利用できることあるいはその度合い)だね。
そしてこれから君が修行していくのが「ウェブアクセシビリティ」。ウェブアクセシビリティというのは「高齢者や障がい者など心身の機能に制約のある人でも、年齢的・身体的条件に関わらず、ウェブで提供されている情報にアクセスし利用できること」君はそういった社会の実現を目指す仕事をしていくんだよ。
見習い君:よーくわかりました!
師匠、これからもよろしくお願いします。
ウェブの世界に存在する”壁”のない世界を目指す
「ウェブアクセシビリティ」
秘書:ウェブは障がい者にとって欠かせないツールですが、健常者には意識されない”壁”がウェブ上にはたくさん存在します。
~様々な障がいのある人たちがパソコンを利用しています~
ICT技術の革新により、携帯電話・スマートフォンにもアクセシビリティ機能が随時追加されています。自宅のパソコンからインターネットを経由するといった従来の方法以外で、多くの障がい者が利用場所を問わずにウェブ情報にアクセスが可能になりました。
例えば障がい者はこういった工夫でウェブを利用しています。
【肢体不自由】
マウス操作が難しい人は、マウスの設定を変えたり、特殊なマウスを使用したり、キーボードでマウスに代わる機能を使用したりしています。
【視覚障がい】
全盲の人はマウスが使用できません。また視覚からの情報が入らないため、多くの人がキーボードを操作しスクリーンリーダーという音声読み上げソフトを使用しています。
【視覚障がい】
弱視の人は、マウス操作が難しいため、スクリーンリーダーとキーボード操作を利用し、背景を黒くしたり、全体をグレーにしたり、文字を黄色にしたりし文字を拡大するなど自身の見えやすい見え方に合わせて設定し利用します。
障がい者以外でも、日本人男性では5%も該当する色覚障がいの人は、赤と緑、黄緑とオレンジ、緑と茶や灰色、青と紫、ピンクと灰色や水色などが間違えやすくパソコンの設定を変更して使用しています。
こういった”壁”に障がい者、高齢者をはじめさまざまな特性を持った人たちは日常的にぶつかっています。
前記の事例で紹介した松葉杖生活者が感じるようなストレスや絶望感といったものをそういった人たちはウェブ利用時に感じています。
しかし、世界中のウェブサイト制作者や運営者がそういった利用者の存在を意識し、正しい「ウェブアクセシビリティ」を考慮したウェブサイトにすれば壁はあっという間になくなるのです。