これから春先に向けて、受験や就職活動、その他の理由でホテルへの宿泊を考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし、障がいがあると宿泊にはバリアフリー環境が整っているかなどで「泊れるホテルが見つからない…」なんてことも珍しくはありません。
そこで今回は、車いすユーザの編集部員が「障がいがあっても安心して宿泊できる」新宿にある京王プラザホテルのユニバーサルルームをチェック!
実際に伺い、レポートします。ぜひご覧ください。
京王プラザホテルとは
京王プラザホテルは、西新宿のビル群に構える超高層ホテルとして1971年に開業、立地条件の良さ、快適に過ごせるホテルとして、世界中のビジネスマンや旅行者が訪れる国際的なホテルです。現在も多くの方に利用されています。
1988年に世界リハビリテーション会議の会場となったことで、車いすユーザでも利用しやすい客室を15室改修したことがきっかけとなり、ホテル業界を率先してバリアフリー化を推し進めるようになりました。
2002年にユニバーサルルーム10室を設置。2007年には補助犬専用トイレの施設を敷地内に新設したことでも話題となり、2018年12月には既存のユニバーサルデザインルーム10室を改装し、ラグジュアリータイプの3室も新設しました。
現在は、計13室のユニバーサルルームがあります。
ユニバーサルルーム情報
ユニバーサルデザインルームは本館30階にあり、そこではさまざまなアイデアや機能が備えられています。部屋のタイプは、デラックス(35.5㎡)、ラグジュアリーデラックス(47.0㎡)、ジュニアスイート(67.4㎡)の3つです。
全室禁煙のツインタイプで、電動ベッドは各部屋に1台ずつ設置されています。各障がいごとの貸出し備品・器具(注1)や、ユニバーサルデザインの工夫や配慮は以下のとおりです。
(注1)それぞれ無料ですが、数に限りがあるため予約時に問い合わせてください。
<視覚障がい者向け>
ユニバーサルームのあるフロア照明は、視覚障がい者向けに他のフロアより明るくなっています。また、カーベットと壁紙は、境界の視認性が高い配色でコントラストをつけて、エレベータ表示の配色も反転です。
ホテルスタッフが非常口の位置や客室内のレイアウトなどを細かく案内してくれます。また、シグナルエイド(注2)が本館30階エレバータホールに対応していて、客室やエレベータホールの方向を音声案内してくれます。自身のシグナルエイドにも反応します。
ドアチャイム・カードキーセンサーは、弱視の方や高齢者に配慮して黒色を使用しています。電話機や各種コントロールパネルも白黒反転の配色となっています。アメニティでは、シャンプーは輪ゴムを2本、コンディショナーは輪ゴムを1本、ボディーソープは輪ゴムなしの状態でセットされていて、それぞれの区別がつくように工夫されています。
(注2)シグナルエイド(小型受発信機)とは、事前情報提供エリアを受信すると「ピッピッピッ」と反応し、情報が必要なときに押しボタンスイッチを押すと、目標物から音声案内を受けられます。
<肢体不自由者向け>
ユニバーサルームの入口ドアは、車いすユーザでも通りやすい余裕がある幅となっています。ドアモニターは、ベッドわきにもあり、わざわざドア付近まで行かずとも、来訪者を確認できその場で開錠することもできます。そして、各種コントロールパネルも、ベッドに寝たままでも操作できるようにベッド脇にあります。
電動ベッドは、移乗しやすいように高さを変えられ、立ち上がりの補助機能つきの電動アームチェアも1台ずつ完備されています。
バスタブには、移乗スペースが30から40cm設けられています。その他、バスタブ用滑り止めマット、手すり、踏み台、移乗台、バスボード、シャワーチェアなどの貸出備品があります。
またトイレには、体幹が弱い方に配慮して、トイレ用の手すり、背もたれ、背もたれクッションの貸出備品が完備されています。
<聴覚障がい者向け>
UDトーク(注3)のソフトが入ったタブレット端末を利用して、フロントと筆談、文字入力でのコミュニケーションが可能です。(一般客室でも利用可能)
遠隔手話通訳サービスを利用して、テレビ電話でコールセンターのオペレーターによる手話通訳を利用することができます。(一般客室でも利用可能)
アラートシステムのモニターでは、以下のことを文字とピクトブラム表示で知らせてくれます。また、同時に室内灯(窓上)の点滅とバイブレータークッションが振動します。
- 来客者訪問時(ドアチャイム)
- 客室電話の着信時
- タブレット端末(UDトークなど)着信時
- 緊急発生時
なお、モニターは、ナイトテーブルとバスルーム内に設置されています。
(注3)UDトークとは、パソコン・タブレットなどの各種デバイスを使ってコミュニケーションができるソフトウェアです。
<補助犬ユーザ向け>
ホテルでは、補助犬(盲導犬・介助犬・聴導犬)を全館で受け入れています。
宿泊の際には、エサと水用のボウルとマットを無料で貸し出しています。(一般客室でも利用可能)
また、補助犬専用のトイレを南館ロビー外側にある公開空地に設置しています。
ご担当者からのコメント
車いすのお客様や視覚や聴覚に障害のあるお客様に配慮した『ユニバーサルルーム』は『13室』です。なお総客室数は『1,455室』です。このほかに、車いすのご利用の方のためドア幅や回転スペースを設け機器を装着できるタイプのお部屋が9室ございます。
1988年に開催されたリハビリテーション世界会議をきっかけとして設置したお部屋の構造をそのままに改装したお部屋です。どちらも、手すりや家具以外の機器はお客様とのご相談により設置することとしており、ホテルでの優雅な時間を演出する雰囲気を大事にしております。合計22室となるので良いということではなく、今後もユニバーサル推進のために何がしていけるのか取り組んでゆきたいと考えております。
ホテル情報
所在地:〒160-8330 東京都新宿区西新宿2-2-1
問い合わせ・予約:03-3344-0111(代表)
駐車場:本館と南館に509台
(車いすユーザ専用駐車場は、南館B1階ロットナンバー601/2台)
「京王プラザホテル」についてはこちら(新しいウィンドウが開きます)
日本の「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」では、延べ面積2,000㎡以上、かつ50室以上のホテル又は旅館に、車いすユーザ用客室の設置数が一定以上義務づけられています。設置数については以下のとおりです。
- 客室の総数が200以下の場合は、客室の総数の2%以上
- 客室の総数が200超の場合は、客室の総数の1%+2以上の車いすユーザ用客室を設ける
しかし、ISO(国際標準化機構)では、少なくとも一般客室20ごとに、1つのアクセシブルな客室が提供されるべきと言われています。皆さんは、この数字をどのように感じるでしょうか?
今回ご紹介した京王プラザホテルのユニバーサルルームには、数々の機能的で洗練されたデザインがたくさんあり、感動すら覚えました。
なぜなら、ホテルという非日常的な空間をくずさず、さりげない心づかいが感じられるデザインがホテルに自然と馴染んで見えたからです。
それはきっと、宿泊客への声に対し、真摯に向き合ってきたホテルマンの証しなのかもしれないと思いました。