みなさんの中には、本を読んだり、調べ物をしたりするときに「図書館」を利用する方もいらっしゃると思います。しかし、視覚障がい者の中には、一般の図書館を利用することが難しい人もいます。
その視覚障がい者が利用しやすいように本の貸し出しなどを行う「点字図書館」という施設が各都道府県にあることをご存じでしょうか。
そこで今回は東京都にある「社会福祉法人 日本点字図書館」をご紹介します。どのような図書館なのか、全盲の編集部員が取材してきました。ぜひ、ご覧ください。
日本点字図書館の概要
全国および海外の視覚障がい者へ点字図書・録音図書を貸し出すなど、さまざまな事業を行っている施設です。
主な事業内容
- 点字図書や録音図書の製作・貸し出し
- 全国の点字図書館とうが所蔵する点字および録音図書のデータを配信する「サピエ図書館」のシステム管理
- 対面朗読(本の内容を対面で読み上げる)サービス
- 視覚障がい者用具の販売
- 視覚障がい者向けIT教室
- 視覚障がい者の自立支援など
点字・録音図書とは
一般の書籍を、点字に点訳(注1)し紙に印刷したり電子データで保存したものを「点字図書」、朗読者が書籍の内容を読み上げ録音したものを「録音図書」といいます。冊子、CD、データなど媒体はさまざまです。
これらは、一般の書店ではほとんど販売されておらず、点字図書館などから借りたり、インターネットからダウンロードして利用します。
製作には多くのボランティアが携わっており、完成までには数カ月程度かかる場合もあります。
(注1)活字を点字に翻訳すること
日本点字図書館の特徴
日々の生活に役立つグッズが手に入る!
1階にある「わくわく用具ショップ」(注2)では、白杖や音声で読み上げる時計など視覚障がい者の日常生活用具、仕切りが付いた財布や点字のついたカレンダーなどの便利グッズを購入できます。
実際に触って確認できる他、白杖などの修理も対応しています。
(注2)インターネットからの注文・購入も可能
多彩な図書を利用できる!
小説、童話、文芸作品などバリエーション豊富な点字図書、録音図書(CD)が所蔵されており、貸し出しが可能です。
基本的に貸し出し・返却は郵送で行われ、年間の貸し出しタイトル数は約27万タイトルに及びます。
館内を見学できる!
視覚障がい者だけでなく、誰でも点字図書館を見学(注3)することができます。
どのようにして点字・録音図書が製作されているのかなど、普段見ることのない現場を知る良い機会です。
(注3)日時が決まっているため、電話予約が必須
編集部員のコメント
私は視覚障がい(全盲)で、両目ともに視力が残っていません。そのため、日本点字図書館は以前から用具の購入・録音図書のダウンロード、海外の書籍を点訳してもらうなどの目的でよく利用しています。
今回は、日々の取り組みを詳しく伺い実際設備に触れることで、私の想像を超える施設だと実感する貴重な経験でした。
例えば録音室の壁・扉はすべてに、音を吸収する防音性の高い素材が使われており、高速で再生しても聞き取りやすい音声が録れるよう工夫されています。また、普段から読んでいるデイジー(録音図書)の収録には、何人もの専門的知識・技術を有するボランティアの協力があるからこそ、視覚障がい者が快適にサービスを利用できると身に染みて感じました。
ご担当者からのコメント
目が不自由になると、日常生活や社会生活のさまざまな場面で不便が生じます。
当館は「点字図書館」という名前ですが、事業は点字図書の貸出にとどまりません。拡大読書器や白杖、音声時計、台所用品など多くの用具を取り揃えた1階のお店は、お電話や来館者で日々にぎわっています。
目が見えない・見えにくいことで困ったことがありましたら、ぜひ当館にご相談ください。
施設情報:
名称:社会福祉法人 日本点字図書館所在地:〒169‐8586 東京都新宿区高田馬場1‐23‐4
電話:03‐3209‐0241(代表)
FAX:03‐3204‐5641
「日本点字図書館」ホームページはこちら(ウィンドウが開きます)
開館日時:(火曜日から土曜)9時から17時(用具事業課 わくわく用具ショップは9時から16時)
休館日:日曜日・ 月曜日・祝日・夏期休業期間・年末年始
アクセス方法
高田馬場駅(JR山手線、西武新宿線、東京メトロ東西線)
各路線早稲田口から徒歩10分、戸山口から徒歩5分
日本点字図書館についてご紹介しましたが、いかがだったでしょう。
「点字図書」や「録音図書」など、聞いたことはあるけれど、これらは、「ボランティアなどで製作されている本」ということを初めて知った方もいらっしゃるかもしれません。
今回紹介した「日本点字図書館」を通して、視覚障がい者も本を読んで情報を得ていること、そのためにさまざまな人たちの協力があることを知ってもらえたと思います。これからも、視覚障がい者の読める本が増えて、読書の幅が広がるといいですね。