人と環境に優しい乗り物で地域貢献する「芳賀・宇都宮LRT」

2024年09月24日掲載

みなさんは、2023年8月26日の開業から1年が経過した「芳賀・宇都宮LRT」をご存じでしょうか。
路面電車としては実に75年ぶり、全線新設したLRT(注)としては国内初と話題になりました。
今回は、そのLRT事業の整備を手掛けた宇都宮市役所のご担当者に、移動のバリアフリーについて、車いすユーザの編集部員がお話を伺いました。ぜひ、ご覧ください。

(注)LRTは英語で「Light Rail Transit」の略。環境に配慮した新しい交通システムとして、日本では「新型路面電車」「次世代型路面電車」という名称が使われることもある。

写真:宇都宮駅東口から出発しようとしているLRTの外観

LRT開発の経緯

聞き手: 宇都宮市でLRTを選択した理由と、開発にかかった時間について教えていただけますか?

ご担当者: 構想から30年ほどです。宇都宮市は南北に関しては鉄道の交通機関があったのですが、東西の特に東側の公共交通が脆弱でした。そこで、「街の中心となる」ような公共交通機関が必要だと考え、“ネットワーク型コンパクトシティ”という、公共交通機関を結びつけるような政策をもとに街づくりをすることにしました。

LRTは、バスより高い輸送力や定時制があり、鉄道やモノレールよりも工事費や事業費を抑制できるため、宇都宮市にちょうどいい乗り物だと考えました。
元々の集客数は通勤通学の方を軸として考えていたため、土日のご利用者は少ないと想定していました。
しかし、土日でも観光などにご利用いただいているので想定以上の状況です。

バリアフリー設計の実力とは

聞き手: LRTのカラーリングは、黄色と黒で「雷光(稲妻)の力」を表現していてすごく目を引きますね。
きっと、乗り物に興味が無い方でも乗りたくなると思います。

ご担当者: 開発当初から、駅や、車両、案内標示などについて、1つのコンセプトに基づいてトータルで魅力的なデザインになるよう考えて進めてきました。

聞き手: バリアフリー設計を考える上で参考にされた公共交通機関はあったのでしょうか?

ご担当者: 基本的には既存の車両ではなく、国土交通省の「交通機関の車両に関する移動等円滑化整備ガイドライン」を参考にしています。
LRT自体が全線新設として認められ、今の時代に合った設計でみなさんに幅広くご利用していただきたいと考えました。全国にあるLRTの中でも最大クラスの大きさです。

写真:車いすユーザの編集部員が2人で前を向いている車内とLRTを前から見た外観

聞き手: バリアフリー席について教えていただけないでしょうか?

ご担当者: LRTは、3つの車両を一編成としています。その内、先頭と後方の2か所に車いすスペースを設けていて、車輪を固定ができる金具と手すりなどを設置しています。バンドで固定するタイプなのですが、車いすのブレーキが優れているので、今のところご利用された方はいないようです。また、真ん中の車両には、さまざまな方に使っていただける車いす1台分位の広さのフリースペースを設けています。

基本的に揺れはありませんが、自動車とも並行しますので、飛び出されてきた時など、不意に急ブレーキをかけるという事象もゼロではありません。そのような揺れを想定した上で、固定金具を設置しています。

聞き手: 電車の乗降りは外づけのスロープが必要な場合が多いのですが、LRTはどうですか?

写真:車いすを直進して乗り込もうとしている編集部員

ご担当者: 停留場と車両の隙間は5cm、段差については計3cm以内を標準としており、外づけのスロープはつける必要はありません。

聞き手: 全線新設したメリットですね。具体的な数字を教えていただけると、車いすユーザとしては段差のイメージがつくので嬉しいです。

周辺地域の活性化に貢献

聞き手: 開業前と開業後での気づきや今後の課題などがあれば、教えていただけますか?

ご担当者: 先に少しお話させていただいた通り、休日や観光のご利用者がどこまで伸びるのか明確ではありませんでした。しかし、開業後は当初の想定よりも2倍以上もご利用いただいているという状況です。
嬉しいことに、整備が始まって約10年位で本市のライトライン沿線では5,000人ほど人口が増え、地価も上昇傾向にあります。また、アンケートを取らせていただいた中に「外出する機会が増えた」「交流機会が増えた」と、我々としても想像以上の反響があり、嬉しく感じています。

一方で、これからの課題は、より快適にご利用いただける設備の充実です。
直近では多目的トイレの設置を行っているほか、バスやタクシーなどの乗り換えの充実化を進めてまいります。

イラスト:路線図。詳細は本文参照

聞き手: 乗り換えができる具体的な停留場と多目的トイレの数などを教えていただけますか?

ご担当者: 停留場は、計19か所あるのですが、乗り換えができるトランジットセンターは、「宇都宮駅東口」「宇都宮大学陽東キャンパス」「平石」「清原地区市民センター前」「芳賀町工業団地管理センター前」の計5か所です。

多目的トイレは、「宇都宮駅東口」「平石」「飛山城跡」「清原地区市民センター前」「芳賀町工業団地管理センター前」の停留場に隣接している建物内にあるか、もしくは停留場近くに設置されています。

写真:各多目的トイレ。詳細は本文参照

写真:リモートでインタビューをしている編集部員聞き手: 今後、中心街の西側に5Kmほど延伸する計画もあるようですが、地元の方からも観光客からも長く愛されることを願っています。
本日は、貴重なお話をありがとうございました。

「ライトレール」を車いすユーザがバリアフリーチェック!の記事はこちら

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