精神・知的障がい者の雇用を
センター部門からスタッフ系部門にも拡大
NTTファイナンス(株)は、これまで積極的に
精神・知的障がい者の雇用を進めてきました。
すでに定着しているセンターでのオペレーション業務に加え
スタッフ系部門にも雇用を広げ
人事制度や相談窓口など制度面の拡充もはかっています。
INTERVIEW
周囲の社員も人間的に成長できる
当社には現在107名の障がい者が在籍し、そのうち44名が精神・知的障がい者です。
これまで各サービスセンターのオペレーション業務等を中心に、精神・知的障がい者の雇用を積極的に進めてきました。各サービスセンターにおいて多くの障がい者が在籍し、グループで業務を行うことは、互いに悩みを相談したり、困ったときに助け合えるといったメリットがあります。また、障がい者の存在が、職場のコミュニケーションを活性化し、社員同士のネットワークを拡充するきっかけにもなっています。そして、さらなるステップとして、スタッフ系部門である人事部門で精神・知的障がい者の雇用をはじめました。まだ、スタッフ系部門での精神・知的障がい者の雇用は一部の組織ではありますが、今後多くの組織に展開するための準備を進めているところです。
スタッフ系部門の交通費の入力業務や会議資料データ作成などの定型業務を健常者に代わって障がいのある社員が担当することで、健常者はより企画的で専門性の高い業務に専念できるようになります。また、個人差はあるものの、精神障がい者の場合、体調に波があり安定的なペースを保つのが難しいこともあったりしますが、上長をはじめ周囲の社員は、障がいのある社員の日々の業務量を調整したり、声かけをしたりと、相手を思いやるコミュニケーションをとれるようになってきています。障がいのある社員と一緒に仕事をすることで、自分たちも人間的に成長していると感じます。
専門家による相談で定着率向上をはかる
制度面では、2018年2月からアソシエイト社員という区分を設けました。この制度では、障がいのある社員は6時間勤務や65歳まで働くことが可能で、対象者の約40%が利用しています。また、NTTクラルティ(株)に依頼して「障がい理解研修」「心のバリアフリー研修」も継続的に実施しています。さらに本年度からは、定着率の一層の向上をはかるため、同社の協力を得て「障がい者定着支援相談窓口」を開設、障がい者本人や周囲の社員が、精神保健福祉士や臨床心理士といった有資格者による相談を受けられるようにしました。
CSRの観点からは法定雇用率の達成は大きな目標ですが、ダイバーシティは数字だけでは語れません。現状に満足することなく、社員がより安心して働き続けられる環境を創出し続けていくことが大切です。将来的には、どの職場にも当たり前に健常者と障がい者がいて、共に成長できる会社が理想です。今後は、そういった職場をひとつでも増やしていき、障がい者雇用を広げていきたいと考えています。
障がい者自身の成長につながる
ビジネスサポートセンターは、リース事業本部の事務処理を一元的に扱う拠点として、全国のリース契約に関する請求や各種変更、契約終了後の手続まで、多様な業務を行っています。現在、9名の精神・知的障がい者が在籍し、そのうち7名はチームで仕事をしています。主な業務は、リース契約書類のPDF化で、これはチームの全員が担当しています。さらに、請求書発行や契約審査書類をデータ上で振り分けるなどの4〜6種類の業務をそれぞれが担当しています。それぞれが複数の仕事内容を身につけてもらい入れ替えることにより、仕事に変化をつけるよう配慮しています。また最近では、書類発送業務が集中する特異日にはそれらの作業も担当してもらうなど稼働が集中する繁忙な担当への短時間、短期間の支援も可能となりました。チームで仕事をすることで、分からないことを教え合うなどして、複雑な仕事や高度な仕事でも自分たちで完結できる体制になっています。フロアには、障がい者専用のスペースは設けておらず、健常者とも自然体で接しており、仕事のやりとりもスムーズです。入社当初は6時間勤務ですが、現在は7.5時間で勤務している人もいます。こうした配慮や体制が定着にもつながっていると思っています。
企業が障がい者雇用を推進するためには、仕事上で戦力になってもらうことが求められます。それがひいては障がい者自身の成長につながるのではないでしょうか。今後は、定着率を重視しつつ仕事の幅を一層広げ、より働きがいのある職場環境をめざしていきたいと思います。
仕事量も自分たちで調整できる
精神障がいのある社員への日常的な対応としては、健康チェック表を毎日書いてもらい、それをもとに毎週1回、1人10分ほど面談を行っています。また、月1回は支援機関を交えた面談も行っています。まず、当社と支援機関で情報を共有し、次に本人を交えて3者での面談。その後、支援機関と本人だけの面談を実施し、上司に直接話しにくいことも話せる機会を設けています。当センターでの障がい者雇用も3年目に入り、チームとしてのまとまりもでき仕事上の日々のコミュニケーションも大変良好です。より安定した雇用に向けて、こうした地道な取り組みを今後も続けていきたいと思います。
仕事上では、それぞれが複数の仕事スキルをもち仕事の組み合わせができることと本人がある程度のその日の仕事を選ぶことができることにより単調になるのを防ぎ、過集中の防止と働きやすさの向上をはかっています。また精神障がい者の場合、疲れが出やすいという特性があるので、5〜10分の休憩時間を1日3回、周囲に気兼ねなく休めるように設定しています。このほか、締め切りのある仕事とそうでない仕事を組み合わせ、本人と各業務グループの裁量で、仕事量を調整できるようにしてあります。
仕事への達成感や自信が生まれる
体制の面では、担当課長の私のほかに、障がい者が担当するそれぞれの業務主幹のグループリーダーが、業務の説明や指導をきめ細かく行っています。また、障がい者は仕事を覚えた後も常に「これでいいのか?」「間違っていないか?」と不安になりがちなので、分かりやすい手順書を作成し、障がい者が常時確認できるようにしてあります。
一方で、単に「頑張っている」ではなく、仕事の実績を数値として記録するため、障がい者自身に毎日の作業件数を入力してもらっています。これは効率化のためではなく、各自の業務実績の可視化です。この記録でほかの人と比較して評価や指導をすることはありませんが、会社への貢献度を客観的に見ることが、仕事への達成感や自信に役立っていると考えています。チームで仕事をすることで、いい意味での厳しさや緊張感が生まれ、互いに高め合って成長していると感じています。